中国人旅行者の消費はどれほどのインパクトなのか?

 日本政府観光局(JNTO)が公表する訪日外客数によれば、2024年実績で最大シェアを占めたのは23.9%の韓国だった。中国はこれに次ぐ18.9%で、台湾(16.4%)、香港(7.3%)と続く(図表①)。具体的な数字で見ると、韓国が882万人、中国が698万人、台湾が604万人、香港が268万人である。

【図表①】

 一方、観光庁の「インバウンド消費動向調査」が公表する1人当たり消費額で見ると、中国が27.7万円、香港が24.9万円、台湾が18.8万円、韓国が10.9万円という順番だ。

 日本経済への影響力という意味では「訪日外客数×1人当たり消費額」が重要になる。単純に上述の数字を掛け算すると、中国は約1.9兆円もの消費インパクトがあり、次点の台湾(約1.1兆円)とかなり開きがある。

 なお、「インバウンド消費動向調査」を見ると、2024年の中国人による消費総額については約1.7兆円と若干数字に齟齬がある。これはインバウンド消費関連の統計を作成しているのが観光庁なのに対して、訪日外国人旅行者数(出入国者数)はJNTO作成であることから、互いのサンプルが異なることに起因している。議論の全体感に影響するほどの違いはないが、注意されたい。

 観光庁発表のインバウンド消費額について、上位5カ国を並べたものが図表②だ。韓国と香港を合計してようやく中国と同額になるという規模感だ。もちろん、今回の措置をもって中国からの旅客が完全に喪失することもないだろうが、半減だとしても▲8500億円程度が失われる。それでも米国1カ国分であり、やはり大きい。

【図表②】

 最も極端な想定として、中国政府が「渡航禁止」を求めればかなり幅を持った減少が十分想定される。今後の続報に注意を払いながらさまざまな想定を練る必要がある。