アマゾンで記念撮影をして帰国後に石油掘削を承認するのか
「赤い州も含め全米の州・市・郡などから100人以上のリーダーがブラジルに集結し『米国は参加している』というメッセージを発している。トランプ氏が妨害しても米国は前進する」とベッカー氏は強調する。
トランプ政権が許可権限を奪ったため、建物性能基準や州政府のカーボンニュートラル計画(35年まで)などカリフォルニア州独自の規制手段を模索している。企業の排出開示義務化は世界的に大きな影響を持ち、企業とサプライチェーン全体を動かすと指摘する。
国際環境ネットワーク「CANインターナショナル」のニュースレター「ECO」は「トランプ政権による代表団の空席が雄弁に物語る。ワシントンは世界を見捨てた。しかし米国の州レベルのリーダーたちはやって来た」と指摘する。
「化石燃料の拡大をやめ、クリーンモビリティーへ投資し、経済計画の中心に正義を据えることが求められる。米国の州指導者に突きつけられている問いは公正な移行を支持するのか、それともアマゾンで記念撮影をしたあと米国に帰国して石油掘削を承認するのかだ」
COP30開催中に、ブラジル・パラ州カショエイラ・ド・ピリア近郊のアマゾンの熱帯雨林をグリーンピースが上空から撮影した。一帯は金鉱地帯となっている(写真:ロイター/アフロ)
キャップ&インベストの収益配分(高速鉄道、住宅、コミュニティーの大気汚染対策)がどこまで「公正な移行」に寄与しうるのか。逆にガソリン価格上昇や低所得層負担という批判にどう答えるのか。「気候正義」を金看板に掲げる側も試されている。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。





