シティグループCEOは何を語っていたか

 たしかに日本企業の評価が構造的に見直されている側面もあるだろう。それだけの大変な調整を日本企業は進めてきた。ガバナンスもアングロ・サクソンの評価からすれば大いに改善している。それでも、この上昇のスピードにはどうも感覚的についていけないところがある。

「その感覚自体が平成のデフレマインドだ」と言ってしまえばそれまでだ。しかし、資産価格の上昇は、上述のような背景の中で起こっているのである。東京都心のマンションは1億円では買えなくなりつつあり、地方都市でも1億円のマンションが次々に建っているとの報道も目にする。嫌な感じはしないだろうか。

 2007年7月、先の金融危機がいよいよ深刻になろうとしていたころ、当時のシティグループのCEOだったチャック・プリンス氏は、フィナンシャルタイムズ紙のインタビューに答えて次のように語った。

「音楽が鳴っている限り、踊り続けなければならない。私たちはまだ踊っている」

 自由な金融取引では結局行き過ぎは避けらないということだろう。金融市場とはそういうものだ。

 新しい技術を巡る企業の競争も同様だろう。だからこそ、どこかで何らかの調整がある程度は起こる事態を、ケースとしては考えておくべきだ。

 次の波が違う方向から来ることを考えると、もう一つ気になるのが暗号資産だ。