米国経済もFRBの政策だけでは限界

篠田:為替水準について政府の姿勢が見えない分、マーケットも不安定になっています。

中野:その通りですね。為替や金融政策の方向性が不明確なまま、財政出動を続けると、結果的にインフレを促進しかねません。整合性のない物価対策が加わると、混乱が生じます。

 金融政策の観点で言えば、日銀や米国のFRB(連邦準備制度理事会)がどう動いてくるでしょうか。

日銀の植田総裁(写真:ロイター/アフロ)

篠田:日米ともに金融政策が揺れていて、為替の方向性が見えづらい状態です。為替取引を仕事にしているプロ以外は、必要以上に気にしすぎない方が良いかもしれません。

中野:米国では中央銀行の中でトランプ派と反トランプ派でスタンスが揺れています。トランプ大統領は「2.5%利下げしろ」などと無茶苦茶な発言をしていますが、米国は関税の影響が出始めインフレが警戒されており、利下げは難しいと思います。

篠田:米国では都市と地方の格差や人種・世代間の分断も進んでいて、数字に出ない実感ベースの物価上昇も深刻です。それに比べると日本はまだ穏やかですが、特に米国の都市部などは物価上昇度合いに賃金の上昇やあらゆる制度が追いついておらず、単純なFRBの政策だけでは対処できない領域に来ているという印象もあります。