日経平均株価が10月下旬に史上初の5万円台を突破した後、「AIバブル」崩壊への懸念から相場は不安定な展開が続いています。11月20日にはエヌビディア決算を好感し日経平均は大幅に反発しましたが、翌21日は再び急落。半導体・生成AI関連銘柄の警戒感は拭えません。新NISAで株式投資を始めた人も多いなか、個人投資家は相場をどう見るべきか。そして、「サナエノミクス」とも呼ばれる高市政権の経済政策に何を期待するのか。なかのアセットマネジメントの中野晴啓社長がファンドアナリスト篠田尚子氏と語り合いました。3回に分けてお届けします。
※対談の詳細はJBpressの公式YouTubeチャンネル「INNOCHAN」でご覧いただけます。収録日:2025年11月18日
一部銘柄が主導するいびつな日本株市場
中野晴啓・なかのアセットマネジメント社長(以下、敬称略):国内では10月に高市新政権が発足し「高市トレード」とも呼ぶ現象がおきました。今後の日本経済や日本株の行方について、どう見ていますか。
篠田尚子・ファンドアナリスト(以下、敬称略):まず日経平均が5万円をあっさり超えたのは、2025年を振り返る上で象徴的でした。ただ中身を見ると、年初に比べて主役が入れ替わっている印象です。内需やインバウンド関連が強かった序盤から、足元では再び半導体関連に資金が集中しています。
中野:一部の銘柄だけが急ピッチで上昇し市場全体を牽引するいびつな相場構造になっていると思います。日経平均株価とTOPIXの乖離も顕著です。
篠田:NT倍率(日経平均株価をTOPIXで割った数値)も4〜5年ぶりの高水準まで上がっていますね。
中野:急ピッチで上がりすぎた相場は天井を打つと、いずれ大きな調整がきます。新NISAが始まってもうすぐ2年ですが、この間は急落してもすぐ戻る傾向が続きました。そのため、「すぐに戻るだろう」と楽観的に構える投資家が多いのではないかと心配です。多くの個人投資家の間には、じわじわと長期間下げ続ける本格的な調整局面への耐性はまだ育っていないのではないでしょうか。
篠田:積立投資が広く浸透するきっかけとなったのは、2018年のつみたてNISA開始以降です。その後の株式市場は、例えばコロナショックのような下落でも割とすぐに回復しました。2010年代の欧州債務危機やブレグジット、日本では震災後に日経平均が8000円を割ったときのような、もどかしい時期を経験している投資家は実はあまり多くないのかもしれません。結果がなかなか出ない難局が続くと、資産運用をやめたくなる人が増える可能性もあります。