ITバブル崩壊と同じ兆候も

中野:まさに現在の相場には、ITバブルを彷彿とさせる現象も見られます。リーマンショックほど社会全体への衝撃は大きくなかったものの、インターネット関連株が熱狂の末に急騰し、期待が剥げ落ちると一気に泡と消えたのがITバブルです。

篠田:かつてのITバブルと今回のAIブームには、どんな似ている点があると思いますか。

中野:例えば、日本株に目を向けると日経平均が5万2000円まで一気に上昇しましたが、よく見ると、数銘柄で押し上げられています。ソフトバンクグループ、東京エレクトロン、アドバンテスト…他、データセンター関連株など。数えられるほどの限られたAI関連株が指数を1割も2割も引き上げました。

 市場全体が上がっているのではなく、一部の銘柄に資金が集中し自己増殖的に値を吊り上げている状況ですが、機関投資家も上がっている銘柄に乗らないとベンチマーク(指数)に負けてしまうため、追随せざるを得ません。

 資金の流れが加速して株価が自己実現的に上昇していく様は、2000年当時のITバブル末期と非常によく似ています。ある種、相場の末期症状的な偏りとも言えます。そして一度市場が冷静さを取り戻せば、そうした砂上の楼閣が一瞬で崩れ去るでしょう。

 いずれ市場参加者がバリュエーション(適正価値)の概念に立ち返れば、今の株価水準は正当化できないのではないでしょうか。それこそが、近く調整局面が来ると私が考える最大の理由です。

篠田:確かにバリュエーションに目を向ける必要があるでしょう。生成AI人気の陰で割安なまま放置されている銘柄も少なくありません。

 振り返れば今年前半は内需株なども堅調でしたが、後半になると生成AI・半導体関連が相場を席巻し、株価指数の主役が大きく入れ替わりました。その結果、指数全体のバリュエーションもかなり割高な水準に突入しています。2025年の相場は、将来振り返ったときに多くの教訓を与えてくれるマーケットになりそうです。

篠田尚子さんとの対談はYouTubeの公式チャンネル「INNOCHAN」でご覧いただけます。チャンネル登録もぜひお願いします!