AI銘柄の独走が生む過熱感

篠田:実際、今年の米国株式市場は「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるごく一部の巨大ハイテク株が完全に牽引している状態で、その割高感もずっと指摘されています。

 そして株高への警戒感からか、行き場を失った資金の一部が金(ゴールド)市場に流入し、今年は金価格も大きく上昇したように思います。AIブームは株式市場だけでなく他の資産市場にも影響を及ぼしているわけです。業界全体の動向やマーケットの値動きを総合的に注視する必要があると感じます。

 さらに視点を変えると、生成AIの普及には莫大な電力消費が伴います。既にスマートフォンでもバッテリーの減りが早いと感じる方も多いと思いますが、世界中で生成AIをフル活用するようになれば、一体どれほどの電力が必要になるのか…天文学的な規模になるのではないでしょうか。

中野:エネルギーが不足すればインフレを招く要因にもなりかねませんし、エネルギーは有限なので無制限な拡大はどこかで行き詰まるでしょう。AIの未来を考える上では、こうした物理的なボトルネックにも目を向ける必要があると思います。

篠田:電力だけでなく、膨大なAIサーバーを冷却するには今後、大量の水が必要になるとの見方もあります。限りある電力と水という資源をAIが大量消費する現状を考えると、持続可能性の観点から課題は大きいでしょう。

 さらに市場の原理として、勝者がいれば敗者もいます。2000年前後のITバブルの時も、熱狂の陰で多くの敗者が生まれました。今のAIブームでも、すべての企業が生き残れるわけではないことを頭の片隅に置いておく必要があると思いますね。