安倍首相も伊メローニ首相も財政運営の健全性に配慮
金融市場の反応は間違いだとして財政を一段と拡張してみても、金融市場が混乱すれば、景気へのダメージは必至である。金融市場の混乱を抑えるため、政府が為替介入をしたり日銀が金融緩和を強化したりしたところで、効果は薄く、むしろ円安とインフレに歯止めがかからなくなるリスクをはらむ。それこそ政権の命取りだ。
アベノミクス路線を踏襲する高市首相は“サナエノミクス”を掲げている。その中身は不透明だが、財政運営の健全性を全く考慮しない単純な財政拡張であれば、金融市場は牙をむく。アベノミクスの時代はそれこそデフレであったし、安倍晋三元首相は任期中に消費税を二度引き上げており、財政運営の健全性にも相応に配慮していた。
また、日銀が大量の国債を買い支えることが可能だったため、金利の上昇も抑制された。しかし現在の日本はインフレ、それもスタグフレーション気味である。日銀も国債発行残高の半分を抱えてしまっており、これ以上の購入は難しく、むしろ購入額を減額している。それでも国債を購入すれば、円安が加速し、インフレが加速する可能性が高い。
メローニ首相が巧みだったのは、分配を求める声には小出しの政策で配慮しつつ、財政の悪化につながるような政策には一切、踏み込んでいないことだ。それでいて、長年にわたって不安が続いたイタリアの政治を安定させている。政治が安定すれば野放図な財政拡張は防がれるため、イタリアの金利は、今やフランスよりも低下している。