——なぜきょうだいや子どもたちにこんなことをするのですか?
「私たちはとても貧しくて、そうしなければならなかった。母は病気で、薬が必要なので私が買わなければならないんです」

——子どもたちの気持ちを考えたのですか?
「ええ、子どもたちはこんなことをするのは嫌だと言いました。でも、私はお金が必要なんだと説明しました。自分が身売りしようとしたのですが、外国人は子どもしか興味がありませんでした」

 彼女は、未成年の子どもに性的虐待を行ったことを認めている。

「違法なのは分かっています。でも、家族のためにお金が必要だったんです。そうしなければならなかったんです。私たちはとても貧しいのです」

 彼女の声には嗚咽が混じり、震えていた。

フィリピン人は「実名」、スウェーデン人は「匿名」の矛盾

 同紙の公開記事には、子どもの性を売ったフィリピン人のマリアの名前、年齢、居住地が明示されているのに対して、その性を買ったスウェーデン人の名前は書かれていない。

 この報道姿勢を見ると、DN紙はフィリピン人の人権が虐待に加担した白人のそれよりも軽いものであると見なしたようにも思える。もしマリアが欧米の白人だったなら、このように実名をさらし、逮捕の様子をそのまま撮影し、ネットで配信するような「見せしめ」を行っただろうか。

 マリアを“罠”にかけて摘発した米国人の捜査官マイクは、自分の功績によって子どもたちが救われたと語り、DN紙上ではまるで自分が子どもたちを救ったヒーローであるかのように主張している。

 そしてDN紙の記者は、犯罪を犯したマリアを容赦なく問い詰めていった。貧困に苦しんだ結果、犯罪に手を染めているのは明白であるにもかかわらず、である。