これは従来のような犯罪組織を介した取引と違い、貧困にあえぐ親やきょうだいによって、幼い子どもたちが直接・個別に犯罪者に搾取されることだ。
かつての被害者が親となり、わが子を売る
11月6日付のスウェーデン全国紙ダーゲンス・ニーヘテル(DN紙)の「Våldtäktsindustrin(性暴力産業)」と題された調査報道シリーズ「Vi var tvungna – vi är så fattiga(私たちはそうせざるを得なかった――私たちはとても貧しいから)」では、フィリピンで広がるオンライン児童性的虐待について取材している。
記事では、スウェーデン人をはじめとする欧州人が金銭を支払い、児童への性的虐待を指示し、子どもが性的虐待を受ける様子をライブ配信などで視聴している実態が明らかにされている。
記事では、フィリピンの貧困層の家庭で起きたことに焦点を当てている。幼い2人の娘を持つマリアは、かつて自分自身が性的な児童虐待ビジネスの犠牲者だった過去がある。その被害者だったマリアが、今度は自分の子どもの性を売る加害者になっているのだ。
被害者と加害者の境界が曖昧になり、かつての被害者が一転して加害者になるという悲劇的な現実と、その背景にある絶望的な状況が浮き彫りにされている。
DN紙が入手したマリアとスウェーデン人の顧客とのやり取りは次の通りである。最初の会話は公開のウェブサイト上で始まり、すぐにプライベートチャットへ移る。価格の交渉が終わると、彼らが“ショー”と呼ぶものが始まる。DN紙が報じたチャットのやりとりは、次のようなものだ。