すでにインフラ供給体制は整った

 1990年代中半、オブジェクト指向のプログラミング言語「Java」が登場したとき、日本人で最初にコードを書いた一人として胸を躍らせました。

 当時も、基本ソフト(OS)やコンパイラーなど、「より基盤に近い技術を触っている人が偉い」という空気があったのです。

 ところが、実際に世界を変えたのは、ブラウザー上で動くアプリケーションであり、ウエブサービスでした。

 グーグル検索、アマゾン・ドット・コムのEC、「フェイスブック」や「ユーチューブ」。

 どれもブラウザーを通して、インターネットというインフラの「上に乗った側」が主役になりました。

 今、AIでも全く同じことが起き始めています。インフラはもう足りている、それでもお金が余っている。

 AIインフラ側のプレーヤーは、すでに「必要十分以上」に揃っています。OpenAI、グーグル、アンソロピック、メタ(Meta)、さらには中国勢やオープンソースの大規模モデル群。

 モデルの性能は半年ごとに別次元に到達し、クラウドはGPU(画像処理装置)を積み増し、世界中のデータセンターが唸りを上げています。

 ここで重要なのは、インフラが重要でないという話では全くないことです。

 むしろ逆で、全人類の富の10%くらいそこに投資してもおかしくないほど、歴史的なインフラになりつつあります。

 問題は「供給側はすでに大量に存在している」という点です。インフラに巨額投資した人たちが本当に欲しがっているものは何か。

 それは、世界中の80億人が夢中になるAIアプリケーションです。

 あるいは、80億人のうち誰かにとっては絶対に欠かせない、無数のAIサービスの群れです。

 今のチャットAIやコーディングAIは、そのうちのほんの入口でしかありません。