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完璧な知能は、人間を退屈にする

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 完璧な技術は人を感動させない。

 1980年代に失敗作とされたローランドのドラムマシン「TR-909」が音楽を変えたように、AIの不完全さもまた人間の創造を刺激しています。

 いま、私たちは完璧ではないAIが、人間の知性を拡張する時代に立っているのではないでしょうか。

 いま、世界中の研究者が目指している究極の目標は、AGI(汎用人工知能)です。

 人間のように学び、判断し、創造できる知性。医学、法学、経済、教育など、知的活動のあらゆる分野を自律的に行える存在。

 理論上、これが完成すれば、人間と同等、あるいはそれを超える人工知能が誕生することになります。

 米オープンAIの生成AI「GPT-5」がAGIになる可能性がありましたが、残念ながら実際にはそこまで行っていません。

 しかし、もしその夢が現実になったとき、私たちは本当に感動するでしょうか。おそらく最初の驚きが去った後に訪れるのは、静かな退屈です。

 なぜなら、完璧な知能は予測できます。そして、予測できるものはやがて飽きられるのです。

 AIがすべての問いに正解を出し、ミスをせず、感情に左右されず、常に合理的な答えを返す世界。そこには安心感がありますが、同時に物語がありません。

 人間は、エラーと偶然と感情の揺らぎの中で生きてきた生物です。完璧なAIは、人間の創造的衝動を静かに眠らせてしまうかもしれません。