権威主義的社会主義は過去の産物に

 マムダニ氏を市長にする原動力となった「アメリカ民主社会主義者協会」(Democratic Socialists of America =DSA、会員数8万人超)のウエブサイトには、こう書かれている。

●DSAは、私的利益、差別、暴力などで支えられている国際経済秩序を拒否し、民主的な計画と市場メカニズムの両方に基づく、より公平で人道的な社会秩序を構想している。

●民主主義から社会主義へと至る道は数多くある。私たちのビジョンは、歴史的な民主社会主義をさらに推し進め、権威主義的な社会主義のビジョンを歴史のゴミ箱に捨て去ることにある。

●明日に資本主義がすぐに終焉を迎える可能性は低いため、DSAは今日、企業の力を弱め、労働者の力を高める改革のために闘っている。

「ティーン・ヴォーグ」(Teen Vogue)*1の政治担当エディター、レックス・マクメナミン氏は、マムダニ市長の統治スタイル次第では、若い世代にとって「社会主義」という言葉のイメージそのものが変わり得るといった趣旨のコメントをしている。

*1=「Vogue」の姉妹ブランドで10代から20代向けのファッション・カルチャー政治メディア。若者読者に向け、「政治参加(activism)」を強く促すリベラル寄りメディアとして知られる。

Zohran Mamdani’s Advice for Election-Results Anxiety? Go Talk to Your Neighbors | Teen Vogue

JFKやMLKを信奉する若者の挑戦

 ギャラップ(Gallup)の調査によると、民主党支持者の約66%が社会主義(socialism)を「肯定的に見る(positive view)」と回答している。

 一方で、同調査では資本主義(capitalism)を好意的に見る民主党支持者は約42%にとどまっている、との結果も出ている。

Democrats More Positive About Socialism Than Capitalism (gallup.com)

「社会主義者は米国を破壊する勢力だ」「共産主義と社会主義は災危だ」とことあるごとに言ってきたトランプ氏。

 来年の中間選挙は、そのトランプ共和党と、社会主義を容認し有権者にとっての身近な経済政策(家賃凍結、低所得層の住宅支援、公共交通無料化、富裕層を対象にした増税など)を提唱する民主党(とそれを側面的に支援するDSA)とが激突する構図が見えてきた。

 トランプ共和党は、ニューヨークではトランプ氏の腹心、ステファニク氏を旗頭に社会主義の粉砕を訴える。

 民主党は、「党内既成勢力」を一掃し、JFK(ケネディ大統領)やMLK(マーチン・ルーサー・キング師)の精神を受け継ぐマムダニ市長やシュロスバーグ氏ら若い世代を担いで戦う心構えができているかどうか。

 一つだけ確かに言えることは、米資本主義の「本丸」ともいえるニューヨーク市の市長選で、民主社会主義者のマムダニ氏に投票した有権者が50.4%に達したことだ。

 特に、若い有権者の間で社会主義的な政策への心理的ハードルが下がっていることは否定しがたい。

New York Election Results Map: How Mamdani Got 1 Million Votes Across City - Newsweek

 有権者が求めているのは、政治的イデオロギーではなく、物価や不動産価格の高騰を抑えるという政治なのだ。