マムダニNY市長を御す狙いか
マムダニ氏の勝利から3日後、トランプ氏の懐刀、エリス・ステファニク下院議員(ニューヨーク州選出、共和党、41歳)がニューヨーク州知事選への出馬を表明した。
社会主義を目の敵にするトランプ氏が自身に忠実な懐刀を州知事に立候補させ、ニューヨーク市政を州政府にコントロールさせたいと考えたとしても、全く不思議ではない。
ニューヨーク州知事は、市税や都市開発、交通インフラなどで強い許認可権を持ち、市政に強く影響を及ぼしうる。
ステファニク氏は、数か月前から州知事選への立候補準備をしており、満を持しての出馬表明だった。立候補のタイミングを見計っていたのだ。
ステファニク氏は、ハーバード大学卒業の才媛。2015年に下院議員となり、政治家として頭角を現した。
元々、穏健派保守だったが、トランプ第1期政権発足以後、トランピズム推進組織といえるMAGA(Make America Great Again=米国を再び偉大に) の中核となり、共和党ナンバー3の下院議員総会会長に就任。
トランプ第2期政権発足と同時に、トランプ氏は同氏を国連大使に指名した。だが、下院で与野党の議席数が僅差なことから同氏を下院に残す必要ありと判断し、指名撤回した経緯がある。
トランプ氏はそれだけステファニク氏を高く評価していたのだ。
「政治姿勢だけでなく、保守的な文化を好み、外交では対中強硬派・イスラエル重視に加え、メディアを動かせるポピュリスト的な側面をもっている」
「トランプ氏は自分に対するステファニク氏の忠誠心と、同氏がジェンダーの役割について保守的思想に基づく政治を実践してきた点にひかれたのだと思う」(保守系メディアの政治記者)
実は、ワシントンにいる知日派の外交通の間では、ステファニク氏を日本の高市早苗首相と重ねて見る人がいる。
「(トランプ大統領と安倍晋三元首相という)実行力ある保守リーダーに2人ともに可愛がられ、その路線を忠実に踏襲している女性政治家」(主要シンクタンクの上級研究員)だからだという。
ところで、状況が急変したわけではないのに、トランプ氏はステファニク氏の国連大使人事は撤回しておきながら、今回はニューヨーク州知事選への立候補をなぜ認めたのだろうか。
ニューヨーク州の政界通は次のように見ているようだ。
●ニューヨーク州はカリフォルニア州とともに民主党の牙城だ。この2州のうち、まずニューヨーク州を共和党が奪取するにはまず州知事を勝ち取ること。
●トランプ旋風が吹き荒れる今、ステファニク氏なら現職のキャシー・ホークル知事(前任者のアンドリュー・クオモ氏がスキャンダルで辞任、その後釜として副知事から昇格、その後、選挙で再選された)に勝てると判断した。
●ステファニク氏を知事に据え、ニューヨーク州を共和党・トランプ色に塗り替える壮大な構図を描いた。
実際、初夏にはホークル氏がかなりのリードを保っていたが、その後、ステファニク氏が急速に支持を伸ばしている。
10月末~11月初旬の調査ではほぼ並ぶか、またはわずかにステファニク氏が優勢という状況に変化している。
これは、ステファニク氏の名前の認知度が上がったこと、ホークル氏の支持基盤(特に無党派層・郊外居住層)が揺らぎを見せたことが影響しているようだ。