その裏側にある国際的な競争と規格の主導権争い
3つ目の理由は、国際的な金融市場における日本の存在感、特に円建てステーブルコインの規格の主導権を巡る競争にある。
世界のステーブルコインの動向を見ると、米ドルに連動したものが圧倒的な優位性を持っている。最新の報告によると、ステーブルコイン市場の時価総額は約2930 億ドル(約45兆円)に達しているとされ、さらにIMFのレポートでは、米ドル建てステーブルコインがその約98%を占めていると報告されている。
もしこのまま米ドル建てのステーブルコインが国際決済の標準規格として定着してしまうと、国際的な取引インフラやデータ管理において、米国企業が圧倒的な影響力を掌握することになる。これは、将来の日本の金融主権に関わる重要な課題と言わざるを得ない。
この国際的な潮流に対し、日本のメガバンクは、共同で円建てデジタル通貨の規格を統一するという戦略を取った。3大メガバンクが共同で動くことは、対立によって国内市場で混乱が生じることを避けつつ、国際競争において有利な立場を築くための布石となるという指摘もある。
実際に3大メガバンクは、合計で30万社を超える巨大な法人顧客を抱えている。この強固な顧客基盤に対し、標準化され、銀行間で相互に利用可能な円ステーブルコインを導入すれば、その国際的な存在感は一気に高まるだろう。
海外の大手金融機関もデジタル通貨関連の事業を進める中、日本のメガバンクがステーブルコイン規格を共同で推進する動きは、将来的にアジア地域におけるデジタル決済の標準規格として、円ステーブルコインが活用されることを視野に入れた、国際的な影響力確保のための重要な一歩となり得る。