山下:障がいのある人を専門的に雇用する特例子会社を作るだけでなく、最近は業者が企業に農園を貸し出して、そこで障がいのある人を働かせる代行事業が増えています。これはルールには反していないけれども、雇用率をお金で買うようなものです。IT企業が農園で障がいのある人を雇っているなんて、(本来の趣旨からかけ離れていて、)とんでもない話です。

 厚生労働省は雇用率をさらに上げて、3%以上にしていくと話していますから、代行事業はまだまだ増えていくでしょう。けれども、私は企業には基本的には本社で雇ってくださいと話しています。仕事を切り出す際に、障がいがあるからできないと考えるのではなくて、できるために何をすればいいのかを考えてほしいですね。

今の時代に合った就労に変えていく

中村裕博士の写真と年表

——今後の太陽の家のあり方については、どのようにお考えですか。

山下:就労支援は一番の柱であり、これは理念ですから、やはり継続していかなければならないと思っています。太陽の家で訓練を受けた人は、就職後の定着率も高いと言われています。テレワークによる訓練を広げるなど、今の時代に合った就労に変えていきたいです。

——社会福祉法人としては、特別養護老人ホームも運営しています。

山下:介護職では人手不足が問題になっています。障がいのある人が、福祉用具を使ったノーリフティングのケア(被介護者を抱え上げないケア)や、ベッドメイキングなどの補助事業に携わるなど、新たな雇用に結びつけることができるのではないかと思っています。介護施設も運営していますので、企業に頼るだけではなく、太陽の家独自でできる雇用も広げていきたいですね。

 就労支援や雇用の拡大とともに、私は『楽しい太陽の家』にしたいと思っています。太陽の家で働いてきた方も定年退職した方が増えていますし、障がいが重度化して働くことができなくなった人もいます。例えば、今導入しているeスポーツであれば、高齢の方も楽しむことができるでしょう。eスポーツは障がいのある人が指導する側に回ることもできて、非常にいい効果があると考えています。