加害者家族が直面する構造的虐待
──この本では「加害者家族」は、社会的・文化的な構造の問題によって不当に扱われたり、権利を侵害されたりする「構造的虐待」の中に置かれると書かれています。
松本:加害者家族は、家族であるという理由だけで、さまざまな不利益を受けます。国が「加害者」の実名を発表すると、マスコミがその家に押し寄せ、家族はその地域社会から排除されることも珍しくはありません。
たとえその家族が事件について何も知らなくとも、社会から制裁を受けます。学校や施設でいじめられても、誹謗中傷にあっても、仕事や家を失っても、家族が自死まで追い込まれても、社会は「仕方がない」と、構造的虐待を維持してきました。
私もまだ抜けられている自信はありませんが、加害者家族自身が「生かしてもらっているだけで感謝しなきゃ」と、自らも構造的虐待を強化していってしまうという側面もあります。

かつて、松井先生に「あなたは今まで生きてきたと言えますか。生きるということは、ただ呼吸をするという意味じゃないんですよ」と言われたことがあります。しかし、最後は息をすることもできなくなった、多くの……、数え切れないほどの加害者家族が自死に追い込まれてきました。
加害者家族は罪とは無関係であり、置かれている状況が構造的虐待に当てはまるという認識が広まってほしい。社会全体として、こういった構造によって加害者家族が孤立しないように、悲しい選択をしなくてもいいように、行政が一刻も早く支援を始めてほしい。誰もが生きやすい社会になってほしいです。
松本麗華(まつもと・りか)
こころの暖和室あかつき 相談員
1983年、オウム真理教元教祖の三女として生まれる。2015年、講談社から『止まった時計』を上梓、カバーに素顔を出してカミングアウト。2025年、この数年間を追ったドキュメンタリー映画『それでも私はThough I'm His Daughter』公開。
長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。
