なぜ温泉に入ると疲れが取れたと思うのだろうか?(写真:grandspy_Images/イメージマート)
目次

 日本には宿泊施設を伴う温泉地の数が2857カ所あり、温泉を利用したスーパー銭湯などの公衆浴場の数も全国に多く広がっている。温泉の定義と効能、そのメカニズム、日本の高温サウナの安全な楽しみ方、『医師が教える温泉の教科書 日帰りでも「湯治」はできる!疲労回復の極意18』を上梓した早坂信哉氏に話を聞いた。(聞き手:飯島渉流)

25℃未満でも温泉?温泉の意外な定義

──温泉と水道水を沸かしたお風呂のお湯の違いはどこにあるのでしょうか。

早坂信哉氏(以下、早坂):日本の温泉は温泉法で、25℃以上か、一定の成分を含むかのどちらかを満たすと定義されます。成分がなくても25℃以上なら温泉ですし、25℃未満でも成分が規定以上なら温泉になります。25℃という目安は、日本の平均気温を基準にしています。平均気温より高ければ地熱の影響を受けた水だろうと考えられるからです。

──「療養泉」は普通の温泉と何が違うのでしょうか。

早坂:療養泉は温泉の中でも療養に役立つとされる泉質をもつものです。基本の温度条件は同じで、25℃以上または特定成分が濃い場合に認められます。

 成分については、例えば遊離二酸化炭素(CO2)や総硫黄、ラドン(Rn)など一部の成分が多いと療養泉ということになります。しかしながら、確実なエビデンスがあるかというと、よくわからない部分も多いです。いずれにしても、温度が25℃以上または一部の成分が濃いと療養泉と言われます。

──温泉には肩こりや関節痛などに効くといった効果、効能が書いてあり、温泉に入ると「疲れが取れる」とか「体が軽くなった」とよく聞きます。温泉の効能とは何なのでしょうか。

早坂:温泉の効能としてもっとも大きいのは温熱作用です。温泉は多くのミネラル分を含有しているので、このミネラル分によって温熱作用が促進されると言われています。

 温泉の泉質によって効果が期待できる「適応症」があります。療養泉であれば「一般的適応症」として、関節痛や冷え性、疲労回復などが認められています。これら適応症の多くは、体が温まること、すなわち温熱作用によるものだと考えられます。

 現在定められている適応症は、私も現在理事を務めている一般社団法人温泉気候物理医学会が依頼を受けて、当時の温泉に関わる文献を整理し、その結果を環境省に提案して2014年に決められたものです。