日本の高温サウナを安全に楽しむためのコツ

──温泉のもっとも大きな効能は温熱作用だということですが、サウナと温泉では体の温まり方にどのような違いがあるのでしょうか。

早坂:温熱作用という点ではサウナも温泉も同じですが、温泉はお湯につかるので浮力や水圧がかかります。水圧がかかると、身体が圧迫されるので、血液が上半身に押し戻されて、心臓や肺に負担をかけることがあります。ですからサウナのほうが温熱作用という点では体に負荷の低い入浴法になります。

 ただ、サウナ大国のフィンランドと、日本で流行しているサウナの入り方はだいぶ違います。フィンランドでは80℃以下が多く、水風呂は必須ではありません。日本の場合だと、かなり高温の100℃のサウナの後、水風呂に入ることが多いようです。温冷交代浴のような、熱さと冷たさを交互に強く交感神経を刺激する入り方となります。

 温熱作用が得られるという点では、フィンランド式のサウナの方が温泉よりも効果が高い可能性があります。また、脳卒中や心筋梗塞を防ぐ効果があるという研究がフィンランドからたくさん出ています。

 一方、日本の高温のサウナと水風呂を使う温冷交代浴は血圧を上げますし、長期的な病気に対する影響などについてはまだよくわからないところがあります。

──日本の高温度設定のサウナの入り方のコツはありますか。

早坂:私の場合は比較的温度の低い、ひな壇の1番下に座ります。そしてある程度汗が出たら、他の人と競い合うようなことはせずにサッと出る。水風呂は使わずに、ぬるめのシャワーで汗を流すか、外気浴をして、体にあまり温度差を与えないようにしています。

 そういった形で日本のサウナを使っていただければ、体に負担が少なくサウナの温熱作用を享受できるかと思います。

アクティビティを伴う「新・湯治」のすすめ

──早坂さんも関わっている環境省の「全国『新・湯治』効果測定調査プロジェクト」ではどんなことがわかったのでしょうか。

早坂:「全国『新・湯治』効果測定調査プロジェクト」(2018年~2023年)は約2万人弱の方に温泉についてのアンケート調査です。全国規模で統一されたアンケート調査は初めてでした。温泉に入った後や温泉地に滞在した後の心身の変化を答えていただきました。

 その結果、実に約9割以上の方が、温泉地に滞在した後により良い心身の変化を感じていたことがわかりました。さらに、ゴルフや登山などのアクティビティを実施した人は、実施していない人と比べて心身に良好な変化がありました。

 また意外なことに、日帰りや1泊2日であっても3泊以上の方と遜色がない程度、場合によっては期間が短いほうが、凝りや痛みが少なくなった、肌の調子が良くなった、健康になったと回答している割合が高かったです。長く宿泊しないと温泉の効果が得られないわけではなく、短い期間であっても、多くの方が温泉の効果を感じていることがわかりました。

 加えて、1年間の温泉地訪問回数と共に調査を進めると、年に一度しか行かない人に比べると、年に6回以上温泉地を訪れる人のほうが、体へのプラスの効果を感じる方が多いことがわかりました。

 温泉地を訪れると心身へのプラスの効果がある、アクティビティによってより効果を感じられる、短い期間でもいいので何度も温泉地を訪れるのがいい、ということがこの調査からわかりました。観光業の方々にもこのようなデータを活用していただいて、温泉地の活性化に結びつけていただければと思います。