二極化の先にある第三の働き方
前回の記事で、AIが生み出した新しい二極化、働きたくても働けない人と働かなくてもいい人について述べました。
しかし、2025年の今、その中間に第三の層が現れ始めています。それはAIと共に働く人です。
彼らはAIを恐れず、むしろAIを相棒として使いこなし、自らの能力を拡張しています。
企業の中でも、AIを禁止するのではなく、積極的に社員に学ばせる動きが出てきました。例えば、広告代理店の博報堂では、社員の半数以上が米オープンAIの生成AI「ChatGPT」や「Midjourney」*1を使ってクライアント提案を行っています。
*1=編集部注:Midjourney(ミッドジャーニー)は、米サンフランシスコに本拠地をもつAIの研究機関「Midjourney」が提供しているテキスト説明文から画像を生成するソフトウエア。
AIが作成したコンセプトを人間がブラッシュアップし、顧客の感情に響く物語を加える。この組み合わせにより、提案のスピードと質が飛躍的に向上しています。
AIと共に働く人たちは、もはや単なる労働者ではありません。彼らはAIマネージャーやAIディレクターと呼ばれ、人間とAIの協働を最適化する役割を担っています。
AIが働く環境を変えるだけでなく、産業構造そのものを塗り替えつつあります。
製造業では、AIが自律的に生産ラインを最適化するAIオペレーション工場が登場。
愛知県のある自動車部品メーカーでは、AIが材料の発注、機械の稼働計画、品質検査をリアルタイムで最適化し、人間は監督と改善に専念しています。
生産性は導入前の1.8倍に達し、残業時間は40%削減されました。
一方で、医療・介護分野でもAIの導入が進んでいます。ただし、ここではAIが人の手を奪うのではなく、人の負担を支える形で機能しているのです。
介護施設では、AIが入居者の行動や表情を解析し、職員にストレス兆候を通知するシステムが広まりつつあります。AIに任せることが、より深い人間的なケアを可能にしました。
これは、原宿にあるリハビリテーションのスタッフが私に語った言葉です。
AIが人間性を奪うのではなく、むしろ取り戻すための手段となる。そこに新しい産業の希望が見えてきます。
