日本が米国に迫られた外貨準備の構成通貨公表
——中国が米国債を買わなくなっている中で、日本はどう動くでしょうか。
河田:日本は安全保障面で米国に依存している以上、どうしても米国債を手放せません。日米の通商交渉の際に「日本が米国債を売却する」というカードを切るのではという憶測もありましたが、さすがにありませんでした。そこはアンタッチャブルな領域です。
結局アメリカに安全保障を頼るのか、それとも欧州のように思い切り防衛費を積み増すのかという選択になります。それは国の経済というより、その手前の国家戦略のデザインの話だと思います。
唐鎌:日本は米国債の購入に限らず、あらゆる意思決定で安保上、米国に依存せざるを得ないので、この点は河田さんのおっしゃる通りかと思います。
個人的に興味深いのが、9月半ばに発表された、加藤財務大臣と米国のベッセント財務長官との共同声明です。ここには、外貨準備の通貨構成を年1回公表することが書かれています。
先進国では異例の措置です。日本がたくさん米国債を持っているのは周知の事実で、日本が売る心配をされているわけではないと思います。恐らく長期的に米国は、他の潤沢な外貨準備を抱えるアジア諸国にも同様の要求をする狙いがあるのではないでしょうか。定期的に構成通貨を公表させれば、顕著にドル離れを起こすことをけん制できるという思惑があるのではないでしょうか。
——政権が変わっても基本路線は変わらないというお話でしたが、新政権に求めることは何ですか。
唐鎌:まず政治が社会保障の問題から目を背けないことです。参院選で有権者の関心テーマは物価高や安全保障ばかりでしたが、実際には、給与の額面を見れば社会保障費で天引きされている額は極めて大きいです。
電気代やガス代など公共料金が多少上がっただけでも大騒ぎするのに、社会保障費が毎年じわじわ増えていることにはあまり注目が集まっていません。新しい政権ではそうした議論をきちんとしていくべきです。
河田:社会保障も含めて、家計の可処分所得をどう成長軌道に乗せていくかが、日本の長期的な成長を考える上でも重要です。企業の利益が家計に還元されることが大事ですが、結局はベアを含め賃金は企業が判断することです。そのため、株式投資を通じて企業の成長を享受する意識も重要になるでしょう。
前編:【新政権で株・為替は?】誰が首相でも円安に!財政拡張でインフレを煽る政策の矛盾、日銀・植田総裁の腹の中は…
