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(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)
テレビはほとんど見ないと公言しておきながら、つい興味を惹かれて見てしまったNHKのドラマがある。放送日時やタイトルは覚えていないが(放映はおそらく8月中旬だった)、内容が興味深かったのだ。
ある企業に依頼すると、死んだ妻を再現動画(蘇生動画?)で生きているように蘇らせることができるのである。
父親はそのありように肯定否定(賛否)のあいだで揺れるのだが、小さい一人娘はまるで生き返ったかのような母親にのめりこんでいく。
父親は、彼女が生きているんじゃないぞと釘をさし、娘は、わかってるよと応じるのだが、結局、結論の出なかったドラマだった気がする。
そうか、今後はこういうことが大きな問題になるかもしれないな、と思った。
亡くなった親や子どもの悲しみに耐えられない人にとっては、この「AI故人」は抗しがたいものかもしれない。
可愛がっていた犬や猫なら、より抵抗もすくないように思われる。
このような故人の再生動画を「AI故人」というようだが、このドラマを見たあと、たてつづけに同種のニュースやドキュメントに遭遇することになった。
AI故人サービスはもう始まっている
8月23日NHKの「サタデーウオッチ9」で、「AIがつなぐ故人との『対話』」という特集があった。
AI故人サービスを提供している会社が紹介されている。
この会社は「ニュウジア」というIT企業である。
HPを見ると、AI故人サービスは数ある業務のなかの1つで、「亡くなった子供に会いたい」「亡くなったあの人に会いたい」「亡くなった母に会いたい」という方におすすめ、とある。
“対話型AI故人”の費用は、年会費30万円(AI故人の作成費用)に、通話料60分600円か、600分2500円が加算される(通話料というのが、よくわからないが)。
このようなサービスは「中国だと、数千億円規模の大きなマーケットになっている」ということである。