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(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)
先日近所のショッピングモールに行ったとき、これまでに見たこともない不思議なものを見た。男子トイレに男たちが(あたりまえだが)5、6人並んで行列をつくっているのである。
え? どうしたのか、いったいなにがあった? なんでこんなに詰めかけてる?
一瞬、頭の中が「?」でいっぱいになる。
駅でもショッピングモールでもサービスエリアでも、とくに休日は、女性トイレが混んで行列になるというのは常識だが、男の行列は、はじめてだ。
その日は平日だったが、夏休み中だった。
中をうかがってみると、小便用の便器は5個あるが、全部空いているのだ。ということは、みんな大便用の個室を待ってるのだ。現に4室全部ふさがっている。
みんな大便を待ってたのか?
それにしてもなんで大便待機人間がこんな時間に集中してるんだ? 家でして来いよ、と思った。それともフードコートでへんなものでも食ったのか。
こういうことが1回だけで終わったなら、忘れてしまって気にも留めなかっただろう。しかしその後、JRの駅でも見たし、また例のショッピングモールでも、何回か遭遇したのである。
で、わたしは確信した。
なにかはわからないが、こういう現象は厳然として存在する、と。
だが、ほかの場所ではどうなのか。ほかの人も見ているのか。けっこうふつうに存在する現象なのかが、わからない。
で、ある人間に話してみた。
ところがその人は、このように断言したのである。
それは男でも、座って用を足す男が増えてきたからだよ、と。最近の若い男はそうすることがあたりまえになってるんじゃないの、と。
ユリイカ!(わかった! とアルキメデスが浮力の原理を発見したときに発した古代ギリシャ語といわれてるが、こんな便所問題で気取ってる場合ではない)
なるほど、そういうこともあるか、と思った。
しかし、そういう人間が一気に増えてきたとも思われない。