徳川家斉
(鷹橋忍:ライター)
NHK大河ドラマ『べらぼう』では、眞島秀和が演じる十代将軍・徳川家治が死去し、城桧吏が演じる徳川家斉が十一代将軍に就任した。今回は、オットセイ将軍とも呼ばれる、徳川家斉を取り上げたい。
八代将軍・徳川吉宗の曾孫
十一代将軍・徳川家斉は幼名を豊千代(ここでは家斉で統一)といい、安永2年(1773)10月5日に生まれた。
寛延3年(1750)生まれの蔦重より23歳年下となる。
八代将軍・徳川吉宗の次男・宗武(むねたけ)を祖とする「田安家」。
四男・宗尹(むねただ)を祖とする「一橋家」。
九代将軍・徳川家重(吉宗の長男)の次男・落合モトキが演じる重好(しげよし)を祖とする「清水家」の三家を御三卿という。
家斉は、生田斗真が演じる一橋家の二代当主・一橋治済(
生母・お富は一橋治済の側室で、旗本の岩本正利の娘だ。
お富の実家である岩本家は、もともと紀州藩士だった。
だが、吉宗の将軍就任に際して、お富の祖父・岩本正房が、田沼意次の父・意行とともに江戸に随行し、正房も意行も吉宗の小姓を務めている。
また、正房の長男・岩本正時と田沼意次は、同日に九代将軍・徳川家重の小姓となった同僚であった。
お富の父・岩本正利は、岩本正時の弟である。
そういった縁から、お富は意次の紹介で江戸城大奥に勤め、その後、一橋治済に見初められたという(竹内誠・深井雅海・松尾美恵子『徳川「大奥」事典』)。
他にも、意次の妻の父・伊丹直賢(いたみなおたか)が一橋家の家老で、意次の弟・意誠(おきのぶ)も、意誠の子・意致(おきむね)も、一橋家の家老の座に就くなど、田沼意次と一橋家の関係は深かった。