訪韓した菅義偉元首相と会談した李在明大統領(7月30日、写真:代表撮影/Newscom/アフロ)

政権交代で見えてきた法律施行

目次

 2025年、「黄色い封筒法」をめぐる論争で韓国社会がかつてないほど揺れている。

 法案一つをめぐって、労働現場から財界、一般市民、そして政治の現場まで巻き込んだ賛否両論の渦。

 その背後には、格差・不公正・グローバル経済の荒波のなかで「韓国社会がどこへ進もうとしているのか」という根源的な課題が横たわる。

 ここでは、「黄色い封筒法」の概要と賛否両論の発生理由、そして将来的に韓国社会と産業にもたらしうる変化を多角的に掘り下げ、日本の課題とも重ねてみたい。

「黄色い封筒法」とは、正式名称を「労働組合法および労働関係調整法改正案」という。主眼となる3つの柱は、次の通りだ。

(1)「ユーザー(雇用者)」の定義拡大:

 例えば、下請け企業で働く人も、実際に労働条件を支配・決定する親会社と直接交渉できる余地を持たせる。

(2)「争議行為(ストライキなど)」の範囲拡大:

 争議対象を「労働条件の決定」だけでなく「労働条件自体の争議」にも及ばせる。

(3)企業側の損害賠償請求制限:

 スト参加労働者・労組に対する企業側からの損害賠償請求を大きく制限する。

 名称の由来は、2014年の雙龍(サンヨン)自動車争議にある。

 大量解雇を契機に長期ストが発生し、多額の損害賠償を命じられた労働者を市民が「黄色い封筒(給料袋)」に寄付を集めて支援した運動が始まりである。

(余談だが、その昔現金を入れて手渡ししていた給料袋なので、日本では「黄色い封筒」より「茶封筒」と言った方が分かりやすいかもしれない)

 韓国でいまなぜ、この法案成立を目指すのか。その社会的背景を考えてみたい。