戦後80年に本書を読むことの意義

 今年は昭和100年、戦後80年、そして阪神淡路大震災という(その後続いて起きるいくつかの震災の原型ともいうべき)画期から30年です。

 これらの画期はそれぞれに重要ですが、私はそれらを考える時に占領期の7年を意識する必要があると思っています。1970年代の江藤淳、1980年代の加藤典洋が戦後について語りはじめた時、彼らは占領という事実について自覚的でした。

 戦後国際秩序が大きく変わるなか、日米関係をどう運営するかはいままで以上に重要になってきています。その際、いまでも私たちの社会のありかたやものの考えかたの多くを形作っている占領という事象を、その起源にさかのぼってたどり直すことには意味があると思います。

 とくに、占領の設計図を書いた当時の米国の考えかたを丁寧にたどり直す、いわば彼らの見方にできるだけ寄り添ってみる(他人の靴を履くput ourselves in others’ shoe)こと。そうすることではじめて、私たちは自身の立ち位置を見通せるのではないでしょうか。

三尾 徹(みお・とおる)
アドバイザー/投資家。外資系投資銀行でM&A・企業金融に携わったのち、政府系金融機関とともに事業投資会社設立。2010年株式会社ミオアンドカンパニー創業。金融・投資業界での経験を活かして、社会課題解決をめざす企業や非営利団体をサポートしている。
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各界の読書家が「いま読むべき1冊」を紹介!—『Hon Zuki !』始まります

(堀内 勉:多摩大学大学院教授 多摩大学サステナビリティ経営研究所所長)

 この度、読書好きの同志と共に、JBpress内に新書評ページ『Hon Zuki !』を立ち上げることになりました。

 この名前を見て、ムムッと思われた方もいるでしょうが、まさにお察しの通りです。2024年9月に廃止になった『HONZ』のレビュアーだった私が、色々な出版社から、「なんで止めちゃうんですか? もったいないですよ!」と散々言われ、「確かにそうだよな」と思ったのが構想のスタートです。

 私、個人的に「読書家の会」なる謎の会を主催していて、ただ定期的に読書家が集まって方向感もなくひたすら本の話をしています。参加資格は本好きな人という以外特になくて、私がこの人の話を聞いてみたいと思える人というかなり恣意的なのですが、本サイトの基本精神もそんな感じにしたいと思っています。

 簡単に言えば、本好きという自らの嗜好に引っ張られ、書かずにはいられないという内なる衝動を文章にしたサイトというイメージです。もっと難しく言えば、カントの定言命令のように、書評を書くことを何かの手段として使うのではなくて、書評を書くことそれ自体が目的であるような、熱量の高いサイトにしたいということです。

 それでまずオリジナルメンバーとしてお声がけしたのが、『HONZ』の名物レビュアーだった仲野徹先生と『LISTEN』の発掘で一躍本の世界の中心に躍り出た篠田真貴子さんです。まあ、本好きという共通点を持ったタイプの違う3人と思って頂ければ結構です。

 ジャンルとしては、基本はノンフィクションで、新刊かどうかは問いませんが、できるだけ時事問題の参考になるものというイメージです。レビュアーの方々には、とりあえず3カ月に一回くらいは書いて下さいねとお願いしています。

 少し軌道に乗ったら、リアルでの公開講演会とかYouTube動画配信とかもやっていきたいと思っています。出版社の方々とも積極的に連携していきたいと思っていますので、宜しくお願い致します。