ネイチャーライターの野島智司氏が推すツクシマイマイ。確かにかわいらしい(写真:野島智司、以下同)
子どもの頃からカタツムリに魅せられ、今なお「カタツムリ見習い」として生きるネイチャーライター・野島智司氏。鳥に食べられ、ヘビに狙われ、それでも進化し続ける不思議な存在であるカタツムリ。殻の進化、粘液の物理学、被食と生存のドラマなど、身近でありながら奥深いカタツムリの世界について、『カタツムリの世界の描き方』(三才ブックス)を上梓した野島氏に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)
──野島さんは「カタツムリ見習い」を名乗っていますが、改めてカタツムリの魅力について教えてください。
野島智司氏(以下、野島):私にとって、カタツムリは人生の師匠と言っても過言ではない存在です。
物心ついた頃には既にカタツムリに惹かれている自分がいました。なぜ、どのようなきっかけでカタツムリが好きになったか覚えていないような状態です。ただ、私自身、カタツムリと似ていると感じる部分が多くあり、親近感を抱いているのかもしれません。
カタツムリは、のんびり、ゆっくり、というイメージがあると思いますが、観察していると、急いでいるように見えるとき、嬉しそうに見えるときなど、さまざまな姿を見せてくれます。そんなところも自分とよく似ていて、親しみを感じずにはいられません。
──書籍でも、「うれしそうなカタツムリ」「具合が悪そうなカタツムリ」の写真が紹介されていました。
野島:カタツムリに本当に表情があるかは別として、私には彼らが感情を表に出しているように感じられます。
と言うのも、カタツムリには「ツノ」と呼ばれる大きなツノ(大触角)が2本あり、その先に丸い目がついています。加えて、口元にも小さなツノ(小触角)がついています。このツノが伸びるバランスや角度が、どこか人間の眉毛や目のように見えたり、口元が口角のように見えたりします。
うれしそうなカタツムリ
具合が悪そうなカタツムリ
体全体の動きも相まって、うれしそうだったり、元気がなさそうだったりと、カタツムリの感情を読み取ることがあるのです。
──書籍ではたくさんのカタツムリが登場していますが、特に野島さんの「推し」のカタツムリを教えてください。
野島:カタツムリは本当にたくさんの種類がいるので、1種類に絞るのはなかなか難しいです。どれもこれも魅力に溢れています。
愛着がある、という観点で言えば「ツクシマイマイ」です(冒頭写真)。
「筑紫(つくし)」というのは福岡の古い地名で、その名の通り、ツクシマイマイは主に北部九州に生息しています。私は福岡に住んでいるので、一番なじみ深く、出会いやすいカタツムリです。とはいえ、ほかにも好きなカタツムリはたくさんいます。
──今回、書籍を読んでいて興味深く感じたのは、カタツムリが殻を持ったまま陸上で生活するようになった進化の過程でした。

