おわりに
イスラエル人のヘブライ大学教授ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、「ガザ、恐怖が招く悲劇の連鎖」と題する日本経済新聞への投稿(2024年3月31日)で次のように述べている。
「イスラエルとパレスチナの紛争は、両者が互いに『相手は自分たちを破壊し尽くそうとしている』との恐怖にとりつかれているため激しさを増している」
「双方とも相手が自分たちを殺害、あるいは追放し民族集団としての存在を終わらせたいと考えていると恐れている」
「これは被害妄想などではない。互いの最近の歴史と相手側の意図をしっかり分析すれば当然の帰結として感じる恐怖だ」
「(中略)イスラエル人は国際社会の目がなければヨルダン川と地中海の間にある土地からパレスチナ人を追放し、ユダヤ人だけの国をつくることを選ぶ可能性が高いとパレスチナ人はみている」
2023年10月に始まったイスラエル・ガザ戦争では彼らの恐怖が本当だったことを裏付けている。
イスラエルを支援するトランプ米大統領は、ガザの住民210万人を近隣諸国に移住させ、米国の管理下でガザをリゾート化する構想を打ち出した。トランプ氏が本気なのか冗談なのかは分からない。
パレスチナ問題の解決はあるだろうか。筆者には予見しうる将来にはないように思える。
件のハラリ氏は、解決策について次のように述べている。
「理想的には相手を排除できるという幻想は双方が捨てるべきだ。平和的解決は理論上可能だ」
「ヨルダン川と地中海の間にはすべての人のために住宅、学校、道路、病院を建設するのに十分な土地がある」
「だが、その実現には、たとえ無制限に権力を与えられたとしても相手の追放を望むことはないと、双方が心の底から言えるようになる必要がある」
「『これまで自分たちをどれだけ不当に扱い、相手がいかなる脅威を見せ続けても生まれた国で尊厳をもって暮らすという相手の権利を尊重する』と言えるようにならなければならない」