「欧州が米国の受け皿になっている」の信憑性

 図表③を見るように、欧州から米国はネットで+588億ドルの純流入であり、純流出は主に北米、具体的にはカナダ(▲808億ドル)が大きかった。

【図表③】

 カナダは確かに米国債(▲577億ドル)から大きな純流出を記録している。「解放の日」以前の第二次トランプ政権発足当初から両国関係は緊張が高まっていたため、その余波などが推測される。

 いずれにせよ、4月に限って言えば、欧州から多額の資金引き揚げが行われたという形跡は見られず、もっぱらカナダの動きが大きかったという総括になる。

 ただ、欧州は確かに+588億ドルと純流入を記録しているものの、深読みすれば、その中でユーロ圏は▲106億ドルと米国債を中心に純流出を記録していた(図表④)。商品別に見れば、米国債が▲206億ドルと相応に大きい。

【図表④】

 それでも欧州全体として純流入が記録されたのはあくまで英国が+676億ドルとすべての商品(米国債、政府機関債、社債、株式)について純流入を記録したからである。

 上述したように、英国の動向は国際金融センターとしてのフローを大きく反映していると思われるため、「欧州が米国の受け皿になっている」という論点を検証するためには、英国とそれ以外は切り分けて考えるべきかもしれない。