2026年、原油市場はどうなるか。写真はイメージ(写真:pan demin/Shutterstock.com)
目次

(岩瀬 昇:金曜懇話会代表世話人・エネルギーアナリスト)

原油価格は誰が、どのようにして決めているのか

 2025年12月16日、先物市場ICE(InterContinental Exchange、インターコンチネンタル取引所)に上場されている北海ブレント原油先物がついに1バレルあたり60ドルを割り込んだ。2021年2月以来の安値である。

 今年初め筆者は、2025年の原油価格はブレント60~80ドルの展開となり、平均価格は65~70ドルになるだろうと予測していた(「岩瀬昇のエネルギーブログ(エネブロ)」2025年1月10日『#958 2025年原油市場見通し 増大する地政学リスクと矛盾抱えるOPECプラス』参照)。
まさにその通りの展開となった2025年だった。

 では、2026年の原油価格はどうなるだろうか。

 本稿では、基本事項を確認しながら、2025年最大のリスクだった「トランプ2.0」が具体的にどのような影響を与えたのか、COP30(第30回気候変動条約締約国会議)の失敗、およびIEA(International Energy Agency、国際エネルギー機関)の世界エネルギー長期展望2025年版(World Energy Outlook 2025、WEO 2025)の変質に見られるように、欧州が性急に進めようとした脱炭素化・エネルギー移行が足踏みを余儀なくされている状況も踏まえ、2026年の原油市場動向を大胆に展望してみたい。

 まず原油価格(油価)は誰が、どのようにして決めているのだろうか。

 筆者は『原油価格暴落の謎を解く』(文春新書、2016年6月)で分析・解説したように、1928年のアクナキャリー協定以降、第二次世界大戦をはさんで1973年のオイルショックまでは「メジャー」とも呼ばれる大手国営石油が、オイルショックから1986年の逆オイルショックまでは「OPEC」(石油輸出国機構)が、そして逆オイルショック以降は今日に至るまで「市場」が決めていると判断している。

 では「市場」とは具体的に何か?