結論を言えば、NYMEX(New York Mercantile Exchange、ニューヨーク・マーカンタイル取引所)におけるWTI(West Texas Intermediate、ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油や、前述ICEにおけるブレント原油を、市場参加者たちが「将来の需給バランス」を予測して行っている取引行為である。
つまりキーワードは「需給バランス」だ。ただし現実の需給バランスではなく、将来需給バランスはどうなりそうか、という「読み」なのである。
再エネ移行は後回し、石油ガスへの回帰は明らか
では市場参加者が考慮するであろう、2026年の需給バランスに影響を与える要因は何だろうか。
需要サイドで言えば経済動向そのものである。
一方、供給サイドで言えば、OPECプラス(OPECと、ロシアを中心とする非OPEC産油国の連携国グループ)の生産政策がもっとも重要だろう。なぜなら非在来型の米国シェールオイルも、ここ数年生産量が急増している南米ガイアナのような在来型の原油生産も、民間企業が長期戦略に基づく独自の経営判断に基づいて実行しており、短期的な市場環境の変化で修正することはほぼないからだ。
さらに市場参加者は、IEAやOPECなどの国際機関、あるいはゴールドマン・サックスなど大手投資銀行の長期予測、さらにはダラス連銀(ダラス連邦準備銀行。12行ある米国の連邦準備銀行の一つ)が四半期ごとに発表している業界アンケート調査結果などを参考にしている。
これら要因を検討する前に、原油市場を取り巻く重要な環境変化について指摘しておこう。一言で言えば、石油ガスへの回帰である。
11月初旬、COP30に先立つ気候サミットで、議長国ブラジルのルーラ大統領は「化石燃料からの移行」ロードマップ策定に強い意欲を見せた。だが「決裂しなかったことが唯一の成果」とまで酷評されたCOP30の合意文書では、一切言及されなかった。
2022年2月に始まったウクライナ戦争がエネルギー安全保障の重要性をクローズアップし、今も87%を占めている化石燃料から再エネなどへのエネルギー移行問題は後回しになっているのである(たとえば「GEPR」有馬純『COP30の結果と評価:パリ協定10年目に見えた1.5℃目標の限界』12月1日・参照)。
出所:「Statistical Review of World Energy 2025」(Energy Institute)