コロナ禍を奇貨として気候変動対策の旗振り役に没頭して来たIEAも、WEO 2025のベースケース(現行政策シナリオ)で、現在の日量約1億バレルの石油需要は増加し続け、2050年には同1億1300万バレルになるとの予測を示した。そのために石油開発への投資は必要だとも述べている(「エネブロ」『#979「IEA WEO 2025」で採用しているシナリオ解説』11月24日、および『#980 11月12日発表の「IEA WEO 2025」』11月25日・参照)。
BPが破棄した「2030年まで石油生産40%削減」
また2000年に「グリーンエネルギーのチャンピオン」になるとして、2030年までに石油生産の40%を削減するとの経営計画を示していた英大手石油会社BPも、株主の圧力の前についにこの計画を破棄すると宣言するに至っている(たとえば「英フィナンシャル・タイムズ(FT)」2025年12月11日 “Inside the failed green revolution at BP and Shell”参照)。
世界は「More Energy Less Carbon」(より少ない炭素排出で、より多くのエネルギー供給を)との大目標を破棄したわけではないが、実現には相当長い時間がかかるとの認識で一致したと言っていいだろう。
さて、このような環境変化を踏まえた上で、2026年の原油市場に影響を与える要因を一つ一つ考えてみよう。
まず、世界経済の成長率をOPEC月報(OPEC Monthly Oil Market Report)から概観してみよう。

2025年はトランプが「解放の日」と胸を張って相互関税を発表した4月2日以降、世界経済の見通しは急激に悪化して2.9%にまで下落し、12月になってようやく「解放の日」以前の3.1%に戻ったという展開だった。
トランプ関税政策がもたらす最大の障害は「不確実性」である。