1973年の第4次中東戦争の勃発を機に、石油危機が起こった写真提供:©Keystone Pressedienst/Keystone Pressedienst/共同通信イメージズ ※Germany Rights OUT (FILE PHOTO: Exact Date Unknown)
「ものづくり大国」として生産方式に磨きをかけてきた結果、日本が苦手になってしまった「価値の創造」をどう強化していけばよいのか。本連載では、『国産ロケットの父 糸川英夫のイノベーション』の著者であり、故・糸川英夫博士から直に10年以上学んだ田中猪夫氏が、価値創造の仕組みと実践法について余すところなく解説する。
未来は本当に予測できるのか。数年後の環境変化を見通し、新規事業を成功に導くPM(プロフェッショナルマネージャー)が身につけるべき「未来を読む技法」とは?
6つの未来予測技法
新商品といっても、既存商品の延長線上であれば開発は驚くほど早く進む。しかし、ゼロから立ち上げる新規事業(0→1)となれば話は別だ。早くても2年、場合によっては4~5年かかることもある。その間に社会の状況が変われば、せっかくの努力も成果に結びつきにくい。
だからこそ、価値創造を担うPM(プロフェッショナルマネージャー)はリリース後の未来まで見通す力が必要になる。MCEモデル*の「Missionフレームワーク」では、この未来予測を「環境研究」と呼んでいる。
*価値創造の使命を明確にする「Mission」、その使命を羅針盤として、さまざまな手段の中から最適な組み合わせを見つけ出す「Combination」、そして見つけた手段を実際に試して検証する「Experiment」という3つのフレームワークで構成するプロダクトマネジメントの手法
環境研究では、次の6つの未来予測技法を使う。
1. 単純外挿法
単純外挿法とは、過去のデータの傾向をそのまま未来に当てはめて予測する方法である。例えば、「過去数年の経済成長率がX%だったので、来年もX%成長するだろう」といった予測がこれに当たる。
「5G通信の次は6G通信となり、通信速度はさらに10~100倍速くなる」や、「現在の購読者の減少ペースが続けば、数年後には新聞がなくなる」といった未来予測の多くも、この単純外挿法によって導かれている。だが、一見もっともらしく見えるこの方法にも、思わぬ落とし穴がある。
『一日一発想366日』(糸川英夫著、講談社+α文庫)では、その具体例としてアポロ計画にまつわる次の話が紹介されている。







