ヒト→ヒト感染例では医師が感染
すでに2年前のケースになります。
2023年4月、山口県在住の90代男性が発熱、食欲不振、体動困難などの症状で病院に救急搬送されました。
外来担当の男性医師(20代)が診察、そのまま緊急入院します。
検査の結果、翌日にはSFTSと診断されます。90代男性は意識障害やけいれんを起こし、急速に容態が悪化して3日目に亡くなりました。
逝去後、担当医だった20代男性医師が、挿管されていたカテーテルを抜き去る措置を行いました。この際、サージカルマスク、一重手袋、ガウンなどを着用して措置に当たりました。
ただし、このときは診察時の眼球保護用ゴーグルを装着していなかったそうです。
この9日後、20代担当男性医師は38度の発熱と頭痛、次いで関節痛、下痢などを発症し、5日後の検査で異常所見が見られたことから、SFTSのPCR検査を実施、病原体が確認されたことで「確定診断」となりました。
こののち1週間ほどの経過観察で、幸い症状は好転、血液検査の所見なども改善し、大過なきを得たのですが・・・。
問題は、この20代男性医師には「マダニ」に刺されるような野外活動歴がなく、またペットの飼育もしていなかった。
つまり従来の2つの感染経路ではない、第3の感染ルートの国内第1号症例と確認されたわけです。
先ほどの図式を踏襲すれば「ヒト→ヒト」ということになる。
考えられるのは、逝去直後のカテーテルの除去時、なかなか出血が止まらない部位の縫合を行ったとのことなのですが、このとき「医療用ゴーグル」をしていなかった、つまりご遺体の血液の飛沫が目に飛び込んで、そこから感染した可能性でしょう。
しかし、こうなってくると、疾病だけでなく周辺事情にも、いくつか困ったことが起こってしまいかねないのです。