草むらに潜むダニには要注意だ(Erik KaritsによるPixabayからの画像)

 愛知県豊田市内で6月に入ってから、相次いで2人の方が「SFTS」で亡くなったと、豊田市から発表がありました。

 私は決して疫学の専門など自任していないのですが、東京都世田谷区の「新型コロナウイルス感染症」後遺症調査の責任者など務めて以降、大学研究室として関連の公衆衛生ネットワークとつながりができ、関連の情報が入ってくるようになっており、有用な情報を以下にまとめます。

 SFTSは、日本語では「重症熱性血小板減少症候群」と呼ばれる疾患です。ヒトの致死率が最大で30%という、恐るべき伝染病です。

 旧来、一般に「マダニ」を媒介してヒトに感染するとされてきましたが、21世紀になって感染経路が複雑化した「新型感染症」です。

 ところが、今回日本での感染は必ずしもダニだけを媒介とはしておらず、かなり複雑な経路で感染の拡大が懸念されています。

 今回はこの「重症熱性血小板減少症候群」SFTSに、いかにして感染しないよう防御できるか、具体的に考えてみたいと思います。

6月、愛知での事例

 豊田市の発表によれば、6月に入って豊田市内に住む50代の女性と90代男性の2人が亡くなり、どちらもSFTSに感染していたことが確認されました。

 このうち、50代の女性は5月に草むらに入って除草作業を行ったそうです。数日後の5月27日、発熱などの症状を訴えて治療を受け始めましたが、発症から10日後の6月6日に入院先の医療機関で亡くなられました。

 これに対して、90代の男性は6月15日、発熱や筋肉痛などの症状を訴え医療機関に入院したとのことです。

 9日後の6月24日になって死亡し、没後の検査でSFTSへの感染が判明、豊田市は事態を重く見、速報で上記の発表を行ったようです。

 ここで注意しなければならないのは「感染経路」です。

 50代女性の方は、草むらに入って除草作業をしていたとのことですから、草藪に棲息しているマダニが病原体を持っており、それに刺されて感染した可能性が考えられます。

 これに対して90代男性は、野外での草取りなど、ダニに触れる可能性のある行動をとっておらず、従来の意味での「マダニ」からの感染は、可能性が低いと見られています。

 では、一体どこから感染してしまったのでしょう?

 豊田市は初夏に入って「ダニの活動が活発な時期を迎えている」として「野山に入る場合は長袖長ズボンや帽子、手袋を身につけて肌の露出を少なくするなどの対策をとるよう」にと、呼びかけています。

 これはまあ、野山に入る人であれば当然の自己防衛策になります。

 しかし「野山に入らない人」90代男性もSFTSに感染、死亡の事実が報じられている。

 一体どこで感染ったのか。それが分からなければ防ぎようもありません。実際には何が起きているのでしょうか?