アメリカのリトリートの文化とは

 アメリカでは、研究室単位、あるいは複数のラボが合同で、山間部や湖畔のコテージなどを数日間貸し切り、2〜3泊のスケジュールで開催されるリトリートが毎年恒例行事として行われる。

 朝と夕方には、各メンバーが自身の研究の進捗や今後の方向性について発表し、全員で建設的な議論を交わす。一方、日中にはハイキングなどといったレクリエーションを行い、研究室内の交流を深める。

 また、食事も全員で協力して調理し、研究の上下関係を超えたフラットな人間関係が築かれる。このような環境では、自由な発想が生まれやすく、研究に対する新たな気づきを得るきっかけともなる。

 筆者のアメリカでの指導教員はインド出身の研究者であり、リトリートの夕食では研究室全員で本格的なインドカレーを調理し、賑やかに食卓を囲んだことを今でも鮮明に覚えている。

 このように、学術的活動と日常生活が密接に結びついた緩急のある研究スタイルは、創造性を高め、柔軟な思考を促進するうえで非常に効果的であると実感している。

リトリートでカレーを作る筆者

 発表されるテーマは、がんと代謝という枠に収まりきらないほど多様で、さまざまな角度からの知見や手法が紹介される。これにより、研究者は自分の分野に閉じることなく、幅広い視点を得ることができる。

「がんと代謝研究会」は、単なる研究発表の場にとどまらず、研究者としての刺激や癒やし、そして新たな発想を得る貴重な場である。こうした研究会が今後ますます発展し、日本における研究文化の深化に寄与することを期待してやまない。