地裁は民主党系判事、高裁は共和党系

 内憂外患のトランプ氏にとって最大関心事は、イスラエル・イランによるミサイル撃ち合いだろう。

 だが、それにもましてトランプ氏が固唾をのんで見守っているのは、6月17日に開かれるサンフランシスコの第9巡回控訴審(高裁)のヒヤリングに違いない。

 トランプ氏は、「ブルーステート」(民主党支配州)カリフォルニアのギャビン・ニューサム知事に何の相談もなしに、暴徒鎮圧の目的でロサンゼルスに州兵、海兵隊を動員させた。

 州の権限を侵されたニューサム氏は直ちに、サンフランシスコの連邦地裁(チャールズ・ブレイヤー判事)に提訴、同判事は即座にトランプ氏の決定は違憲であり、州兵による鎮圧行動の一時凍結を命じた。

海兵隊については連邦政府機関支部と職員の安全確保・警備であるとして判決の対象からは外していた)

 これを不服とするトランプ氏は、6月13日、サンフランシスコの第9巡回控訴裁(高裁)に上訴。

 同裁は3人の判事による協議の結果、6月17日午後12時(米西部時間)からヒヤリングを開いて最終判断を下すことを決めた。

United States Court of Appeals for the Ninth Circuit

 この決定にトランプ氏ははしゃいだ。

「高裁は、州兵がロサンゼルスで引き続き鎮圧活動ができるとの判断を下したもし私が州兵を派遣していなければロサンゼルスは燃えていたはずだ。私はロサンゼルスを救ったのだ。私の決断に感謝せよ!!!」

 地裁の判決に小躍りしていたニューサム氏も黙ってはいない。

「州兵の派遣は違法だ。軍隊の出動はデモ参加者を鎮めるのではなく、緊張を高めるだけだ」

 両サイドは6月17日のヒヤリングで面と向かってそれぞれの主張をぶつける。

専門家:暴徒鎮圧権限は軍隊にはない

 退役州兵准将でトーマス・M・クーリー法科大学院のマイケル・マクダニエル名誉教授は、こう指摘する。

「犯罪行為阻止に関与し、鎮圧する権限は州に委ねられている。連邦政府は関与すべきではない」

「トランプ大統領が軍隊を動員できるのは、暴徒の鎮圧ではなく、暴徒による連邦政府の出先機関のオフィスの安全確保およびそこで働く職員の生命を守る目的にだけだ」

「軍隊はあくまでも政治については中立の立場をとることが義務づけられている。軍隊は法執行機関ではない」

「もしトランプ氏が軍隊に違法行為を命じても最高裁の判断により免責されうるが、軍幹部は軍事司法法典(Code of the Military Justice)に反するとして罰される」

「ロサンゼルスの状況を見ても、大統領が軍隊を出動させるような状況には至っておらず、ホワイトハウスが軍隊を派遣することで憲法修正第1条をめぐる論争をすれば、米国憲法および米国の政治制度の根幹についての政治論争に発展するのは必至だ」

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