全米数百万人は平和的な反トランプ・デモ

「ノー・キングズ」(王様はいらない)集会・デモは、軍事パレードに対抗する目的でリベラル派団体が計画していた。

 そうした中、トランプ氏がロサンゼルスでの米移民・関税捜査局(ICE、国土安全保障省傘下)による移民取り締まりに抗議するメキシコ系市民のデモが暴徒化すると見て、州兵、さらには海兵隊を出動させた。

 さらに、クリスティ・ノーム国土安全保障長官の記者会見を妨害したとしてメキシコ系のアレックス・パディヤ上院議員(民主党、カリフォルニア州選出)をICE当局が不当拘束したこと、ミネソタ州でメリサ・ハートマン州下院議員夫妻が暗殺されたことなどもあって、大規模な反トランプ運動に拡大した。

 デモの参加者は一般市民で家族連れや高齢者の姿も多く見かけられた。警戒に当たった警察隊とも衝突はなく、平和的だった。

 例外として、ロサンゼルスでのデモでは、夕刻になって一部参加者が警官隊と衝突した。

 メキシコ国旗を掲げた参加者で、地元紙の記者によると、ことを荒立てようとするギャングなど不満分子の暴力行為ではないか、という。

 いずれにせよ、平和裏に終わろうという反トランプ・デモにとっては汚点となった。

 ロサンゼルスでは、依然として夜間外出禁止令が敷かれていたが、6月14日のロサンゼルス・ドジャース対サンフランシスコ・ジャイアンツの試合は予定通り行われた。

 テレビや新聞では、デモ隊に投げつけられた発煙筒の白煙や炎上する車がセンセーショナルに報じられている。

 前述の世論調査では、米国民のテレビ報道に対する信頼度は12%、新聞は18%だ。

「テレビがデモの暴徒化を煽っている」(ロサンゼルス市警関係者)面もなきにしもあらず、だ。

地裁判断に失望、高裁判断に欣喜雀躍

 もともと前言を翻すことはなく、虚偽が判明しても認めぬ、第三者からの批判には「馬の耳に念仏」のトランプ氏。

 こうしたトランプ氏の深層心理についてミズーリ大学のフランク・ボウマン教授はこう分析している。

トランプ氏がすべての事態に非常事態を宣言して州兵や海兵隊を出動させた行動の背景には、自分が気に入らない相手には政府の力と暴力の使用を容認させようとする意図がある」

Curfew in LA as protests against Trump’s immigration crackdown continue | Donald Trump News | Al Jazeera

 トランプ氏の厳しい移民対策は白人層から熱烈な支持を得ていることは各種世論調査が示している。

 そこをとらえて、この際、大統領の権限を強化して、大統領に対する憲法上の制約を取り除こうとしているとの疑念がリベラル派から出てくるのは当然の流れだ。

 だが、不法移民取り締まりを盾に大統領の国王化を目指す(?)トランプ氏が軍事パレード観閲の際に見せた態度には首をかしげる米国民も少なくない。

 ロサンゼルス近郊に住む共和党支持の高校教師Gさんは筆者にこう述べている。

「FOXニュースの中継を見る限り、観閲席に陣取ったトランプ氏は眠たいのをこらえるのに必死だった

「疲れがたまっているのか、80歳を寸前にして老化が進みだしたのか。全く覇気がない」

「最後まで健気に矜持を守っていたのは、白のスーツをスキなく着こなしたファーストレディ、メラニア夫人だけだった」