ローマ教皇の葬儀に参列したバイデン前大統領(4月26日、写真:AP/アフロ)

隠蔽工作は犯罪自体より罪は重い

 米国のジョー・バイデン前米大統領(82)が重度の前立腺がんと診断され、骨に転移していることが5月19日、明らかになった。同氏の事務所が発表した。

Biden diagnosed with ‘aggressive form’ of prostate cancer | CNN Politics

 ワシントン政界は、バイデン氏ががん患者でありながら大統領職を続けていたのではないのか、といった「隠蔽疑惑」にまで発展している。

 ワシントン政界に精通する主要メディアのベテラン・ジャーナリストはこう言う。

「米国では政治家が違法を行った場合、それ以上に罪が重いのはそれを隠蔽することだという不文律がある」

「その好例が、ウォーターゲート疑惑で弾劾寸前まで行って辞任したリチャード・ニクソン第37代大統領のケースだ」

Cover-Up is Worse Than the Crime - Political Dictionary

 罪は謝罪して罰を受ければよい。だが、それをもみ消そうとする行為は国家・国民に対する反逆行為にも値する、という。

 その意味で、今回の診断公表により、もしバイデン氏が大統領の任期中に前立腺がんが分かっていたとすれば、隠蔽行為に当たることになる。

 がんの進行具合は、「グリーソン・スコア評価システム」(Gleason score grading system)の10段階中9」で、相当深刻だという。

 かなり以前から悪かったし、テストも受けていたに違いない、といった声が医療関係者から出ている。

Biden's aggressive prostate cancer: what you need to know about the disease | Reuters

 この公表の直前、著名なCNNのキャスター、ジェイク・タッパー、アレックス・トンプソン両氏が書いたバイデン陣営の内幕もの、「Original Sins: President Biden’s Decline, Its Cover-Up, and His Disastrous Choice to Run Again」が発売された。

Original Sin: President Biden's Decline, Its Cover-Up, and His Disastrous Choice to Run Again: Jake Tapper, Alex Thompson, Jake Tapper

 その中で、バイデン氏の一握りの側近たちが同氏の体力・認知機能の衰えを感知していたにもかかわらず必死になって隠そうとしていた「事実」が暴露されている。

 その「事実」が全米に浸透している中でのがん診断の公表だった。

 遡れば、大統領に当選した段階から、あるいは再選表明した2024年の時点には分かっていた公算あり、ということだ。

 バイデン氏については、再選を目指して2024年7月、ドナルド・トランプ共和党候補と行ったテレビ討論会で、高齢からくる心身の衰えを隠し切れず醜態を演じてしまった。

 それが引き金となって立候補を断念せざるを得なくなったわけで、それもこれも、前立腺がんと関係があったのか。

 高齢問題に加え、がんと戦いながら大統領職を続け、しかも再選まで目論んでいたのか。

 疑惑が疑惑を生み、増幅されている。

 その「事実」を知りつつ大統領職を続けた本人、それを隠蔽し、しかも再選までさせようとしたジル夫人や側近は「国家に反逆するに等しい責任の放棄」(a near treasonous dereliction of duty to their country)(著名なコラムニスト、ミーガン・マッカードル氏)だ、という批判が出てきても不自然ではない。

Opinion | Biden’s decline was covered up by Democrats and media - The Washington Post