渡りに船の前立腺がん診断だが・・・
そこに今回の前立腺がん診断の公表が飛び出した。「バイデン問題」から民主党が吹っ切れるきっかけになったのだ。
バイデン氏の高齢問題にもかかわらず、最後の最後までバイデン氏を支えた党内体制派による「拘束」がこれですっ飛んだわけだ。
政治専門オンライン「ザ・ヒル」(The Hill)は先陣を切って、「これで2028年の大統領候補はアウトサイダー(門外漢、部外者)になる可能性が出てきた」と大胆に予想した。
ザ・ヒルが上げた「門外漢」は、以下の通りだ。
〇マーク・キューバン(テレビパーソナリティ、NBAダラス・マベリック・オーナー、億万長者)
〇ジョン・フェターマン上院議員(ペンシルベニア州選出、元ペンシルベニア州ブラドック市長、元同州副知事)
〇アンドリュー・クオモ元ニューヨーク州知事(ニューヨーク市長選に立候補している)
キューバン氏(祖父が米国に帰化する際に「Chabenisky」を「Cuban」に改名)は、ユダヤ系ロシア人移民の3世。
大胆なメディア買収で財を成した寵児だ。スポーツファンの間では圧倒的な人気を博している。
一般大衆受けや政治経験ゼロといった点ではトランプ氏と相通ずるところがある。
(Mark Cuban - Wikipedia)
同氏は根っからの民主党員だが、バイデン政権下では党の体制派とは一線を画してきた。
「民主党はやることなすこと間違っている。本当のイシューは(一般国民との)コミュニケーションだ。それが民主党には欠けていたのだ」
「トランプ氏のやっていることを批判しているだけでなく、先を見越した新しい考えをアグレッシブに打ち出すことだ」
「民主党は自分たちに何か利益をもたらすことをやってくれると、有権者に実感させなければならない」
フェターマン氏はリベラル派だが、トランプ大統領の政策には是々非々のスタンスをとっている。
トランプ政権のマルコ・ルビオ氏の国務長官人事では賛成票を投ずるなど民主党多数派とは異なる対応をとっている。
草の根層からは圧倒的な支持を得ている。
(John Fetterman - Wikipedia)
一方、クオモ氏はセクハラ疑惑で知事のポストを剥奪されたが、今なお無実を主張している。
その間、民主党体制から外されてきたが、父親マリオ氏は州知事を3期務めている。バイデン色一掃ムードの中で返り咲く可能性大だ。
(アンドリュー・クオモ - Wikipedia)
リベラル派インテリ・エリートを駆逐せよ
この3人に共通している点は、クリントン―オバマ―バイデンと続いた民主党リベラル体制に対するアンチテーゼであること、頭でっかちの「リベラル派インテリ・エリート」が牛耳ってきた民主党に距離を置いていることなどがあげられそうだ。
実際問題として、彼らが2028年の民主党大統領候補になる確固たるシナリオはないが、民主党が変わるための起爆剤になることは間違いないだろう。
民主党の戦略家の一人、ジャマル・シモンズ氏は、ポリティコの予想をこう受け止めている。
「民主党はこれまでと同じようなことを続けても大統領のポストは奪還できない。ノーマルではない何か変わったことをやらねばだめだ」
「なぜなら、トランプの時代はノーマルではないからだ」
オバマの秘蔵っ子が「Blue MAGA」提唱
一方、オバマ元大統領の秘蔵っ子(Treasured Child)と目されるロー・カンナ下院議員(カリフォニア州選出)は、5月21日発売の「バニティ・フェア」(Vanity Fair=6月23日号)とのインタビューでこう述べている。
「今こそ、民主党はトランプ氏のMAGA(米国を再び偉大な国にする運動)に対抗する『Blue MAGA』(民主党版MAGA)を打ち出すべきだ」
「その一例として、中西部のハイテク、鉄鋼業に巨額の連邦政府のカネをつぎ込み、新しい工場を作り、雇用を創出する」
「これは、民主党による『プログレッシブ・キャピタリズム』(Progressive Capitalism)であり、『経済愛国主義』(Economic Patriotism)だ」
(Ro Khanna Really Believes “Blue MAGA” Can Save the Dems—and Steve Bannon Loves It | Vanity Fair)
「バイデン問題」というタブーが取り除かれた民主党。いよいよ2028年に向けて百花繚乱になりそうな兆しが出てきた。
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