米中対立の本質はレアアース対半導体

——日米で交渉が進む一方で、米国と中国はロンドンで閣僚級の協議を行いました。この動きをどう見ますか。

細川:5月初め、ベッセント財務長官は中国側と、関税の大幅な引き下げに加えて、中国が実施しているレアアースの輸出規制を緩和することをジュネーブで合意しました。しかし、関税合戦は米中対立の本質ではありません。重要なのは、米国が中国に対して実施している半導体の輸出規制に対して、中国がレアアースの輸出規制で米国に対抗する、という半導体vsレアアースなのです。

 米国はバイデン政権から中国に対して先端半導体の輸出規制を実施しています。中国としては、これをなんとかしてやめさせたい。それが習近平政権の狙いで、レアアースという新たな武器を使って対抗する計画を緻密に練ってきており、それをいま、実行しているのです。

——ラトニック商務長官もロンドンでの中国との協議に参加しましたね。

細川:半導体を管轄しているのは商務省です。つまり、ラトニック商務長官が協議に参加したことからも、米中交渉はレアアース対半導体という構造になっているのは明らかです。1回目のジュネーブでの交渉の時は、参加したのはベッセント財務長官とグリア米国通商代表部(USTR)代表だけでした。

レアアースの「蛇口」をコントロール

——交渉の結果、中国は6カ月間、レアアース供給を緩和することになりました。

細川:確かに米国は、これで一息ついているかもしれませんが、本質的な解決ではありません。6カ月の間に半導体規制の緩和の議論が進展しない場合、中国は再びレアアースを武器に揺さぶりをかけるでしょう。

 中国はレアアース規制という「蛇口」に常に手をかけていて、米国の出方に応じて蛇口を閉めたり緩めたりしながら、半導体規制を緩和させようとしているのです。中国はこのレアアースの武器を手放さないでしょう。

——レアアースと半導体をめぐる米中の対立は、日本にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

細川:中国は日本に対してもレアアースの供給を絞っているので、無縁ではいられません。実際、必要なレアアースを入手できずに慌てている企業も結構多いようです。自動車業界だけではなく、電子部品やロボットなどの業界などで問題が顕在化しています。

 中国はレアアースという蛇口の開け閉めを日本に対してもするでしょう。日本も中国に対して半導体分野で輸出規制をしているわけですから、中国にとっては日本も揺さぶりをかける対象というわけです。今後、かなりのせめぎ合いが予想されます。