G7では「何らかの」合意、時間軸は延長へ

細川:いま交渉の中心は自動車関税の扱いで、交渉相手のラトニック商務長官は強硬派ですから、すんなりと合意という状況になっていません。赤沢再生相が米国にいない間も、事務方は米国に残って必死に交渉をし続けています。それでも相当時間がかかるでしょう。

 今の状況から推察すれば、G7での「きちんとした合意」は難しいと思います。協議は続けている状況なので、「何らかの合意」をしたという形はつけるでしょうが、「何らかの合意」には幅があります。協議するテーマを挙げて大枠の合意をして交渉を前に進めましょうといった、ざっくりとした方向性を示すようなものになるのではないでしょうか。

カナダでのG7サミットに出席するため現地に到着した石破茂首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

——ベッセント財務長官は、相互関税の上乗せ部分の猶予期間を延長することを示唆しています。交渉の時間軸は変わってくるのでしょうか。

細川:日本側は交渉に相当リソースを割いていますが、米国側のラトニック商務長官、ベッセント財務長官、グリアUSTR代表の3人は中国やインド、韓国、EU(欧州連合)などとも交渉をしなければなりません。政権内のスタッフはパンク状態です。相互関税の上乗せ部分の猶予期間は7月9日までとなっていましたが、それまでに全てをまとめるのは事実上難しくなっています。

 交渉の猶予期間は、米国側の事情で延びざるを得ないでしょう。ただし、その場合でも全ての国に対して猶予期間を延長するのではなく、誠実に交渉しているというのが条件になります。日本は赤沢再生相が毎週のように訪米しているので、誠実に交渉している国の典型とみなしてくれるでしょう。そのため、交渉が7月9日までにまとまらなくても、継続してできると思います。

 日本側にも、焦点の一つとなっているコメを含む農産物の交渉カードを、参議院選挙の前に切るのは難しいという事情があります。

 それでも、ゆっくり交渉すればいいというわけではありません。赤沢再生相も「ゆっくり急ぐ」と発言しています。すでに自動車分野には高い関税が課せられており、自動車関連の産業には深刻な影響が出ています。悠長に構えているわけにはいきません。「ゆっくり急ぐ」という微妙な表現のように、バランス感覚が求められると思います。