
(ライター、構成作家:川岸 徹)
充実した浮世絵コレクションを誇る千葉市美術館。開館30周年を記念した展覧会「江戸の名プロデューサー 蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」が開幕した。
千葉市美術館が誇る浮世絵の名品
NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の放映もあり、浮世絵人気が高まっている。今回の浮世絵ブームの特色は、絵師とともに版元が注目を集めていること。ご存じの通り、『べらぼう』の主人公は江戸の浮世絵界を代表する版元のひとり、蔦重こと蔦屋重三郎。ドラマでは蔦重の活躍とともに、須原屋市兵衛、西村屋与八、鶴屋喜右衛門といった老舗版元たちとの関係性も取り上げられ、江戸の出版界のリアルを知ることができる。
ドラマ放映による追い風もあり、浮世絵をテーマにした展覧会が相次いで開催されているなか、またひとつ注目の展覧会がスタートした。千葉市美術館で開幕した「開館30周年記念 江戸の名プロデューサー 蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」だ。
浮世絵ファンには、本展の開催を待ちに待っていたという人も多いだろう。というのも、そもそも千葉市美術館は故今中宏氏の渓斎英泉コレクションを千葉市が購入したことをきっかけに設立。開館後も浮世絵の祖・菱川師宣が房州出身ということを踏まえて、浮世絵の収集に重点が置かれてきた。しかも今回は開館30周年の記念展。国内有数といわれる浮世絵コレクションから選りすぐりの名品がずらりと並ぶのは想像に難くない。