長嶋は9月19日の後楽園球場の広島戦で、鵜狩道夫から左翼に本塁打を打ったが、一塁ベースを踏み忘れた。これを見ていた広島の一塁手の藤井弘が一塁塁審にアピールし「アウト」になった。この踏み忘れがなければこの年の長嶋は「新人でトリプルスリー」という空前の記録を樹立したことになる。
安打製造機
1994年にオリックスのイチローがNPB記録の210安打を達成。NPBはこの快挙を讃えるべく急遽「最多安打」を打撃タイトルに加えた。それまではタイトルではなかったが、長嶋茂雄は1年目に153安打を打ってセ・リーグ1位になったのを皮切りに、10回も安打数でリーグトップになっている。
最多安打を記録した回数
長嶋茂雄:10回
川上哲治:6回
イチロー:5回
榎本喜八:4回
福本豊:4回
ブーマー:4回
秋山翔吾:4回
長嶋は断トツ。けがや病気などでの欠場がほとんどなく、フル出場を続けたうえに、積極的に打ちに行く打撃で、安打を稼いだ。
長嶋と1年遅れで入団した王貞治は、1962年に一本足打法を会得してから13年連続本塁打王。セ・リーグ最強打者になっていく。3番を打つ王が歩かされ、4番長嶋と勝負というシチュエーションが増えたが、長嶋はこうした状況でしばしば痛打を放った。最多安打の中には「意地で打った安打」も多かったはずだ。