スペイン絵画を学んだルノワール

ポール・セザンヌ《セザンヌ夫人の肖像》1885-1895年、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館
© GrandPalaisRmn (musée de l'Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

 家族を描いた肖像画も見比べを。《セザンヌ夫人の肖像》は、セザンヌの妻オルタンス・フィケがモデル。無表情な顔に厳粛さや冷たさを感じる一方で、その冷たさが人物の存在感を強めているようにも感じる。モデルが座る椅子の置き方も正面からずれており、全体としてバランスが悪い。もちろん、それがセザンヌの狙い。セザンヌの作品には必ずと言っていいくらい、心に「引っ掛かるもの」がある。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《ピエロ姿のクロード・ルノワール》1909年、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館
© GrandPalaisRmn (musée de l'Orangerie) / Franck Raux / distributed by AMF

 ルノワール《ピエロ姿のクロード・ルノワール》は、当時8歳だった末息子クロードを描いたもの。鮮やかな赤の衣服と白い襟と靴下のコントラストが印象的。ただし、後年になってクロードは「この襟や靴下は非常に不快だった」と語っている。作品のはにかんだような表情には、その不快さが表れているのかもしれない。

 本作は、ルノワールが1892年のスペイン滞在中に見たディエゴ・ベラスケスやフランシスコ・ゴヤによる子供たちの肖像画からの影響が指摘されている。縦に長い画面、大理石の巨大な柱のある背景、簡潔で力強い構図。画面の随所に、スペインの宮廷肖像画からの伝統が感じられる。

 様々な試行錯誤や実験を繰り返し、生涯にわたって理想とする絵画を追い求めたセザンヌとルノワール。その姿勢は、次の世代の画家たちのよきお手本となった。展覧会の最後には、両者から影響を受けたというピカソ作品が展示されている。

 

「オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠」
会期:開催中~2025年9月7日(日)
会場:三菱一号館美術館
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜日、第2水曜日、8月の毎週土曜日、9月1日〜9月7日は〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし祝日、6月30日、7月28日、8月25日、9月1日は開館)
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

https://mimt.jp/ex/renoir-cezanne/