左/ピエール=オーギュスト・ルノワール《風景の中の裸婦》1883年、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館 © GrandPalaisRmn (musée de l'Orangerie) / Franck Raux / distributed by AMF
右/ポール・セザンヌ《3人の浴女》1874-1875年頃、油彩・カンヴァス、オルセー美術館 ©GrandPalaisRmn (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

(ライター、構成作家:川岸 徹)

フランス・パリのオランジュリー美術館が、ルノワールとセザンヌという2人の印象派・ポスト印象派の画家に同時にフォーカスし、企画・監修を務めた世界巡回展「オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠」。ミラノ、マルティニ(スイス)、香港を経て、東京・三菱一号館美術館で開幕した。

印象派の礎を築いた2人の巨匠

 今でこそ西洋絵画の基本のように扱われている印象派だが、そもそも印象派の画家たちは美術史の本筋から外れた“はみ出し者”だった。印象派が登場する19世紀中頃までの絵画は、聖書や神話を題材にした歴史画(物語画)が中心。美術界を牛耳っていた美術アカデミーとサロン(官展)は何よりも伝統や格式を重んじ、その枠からはみ出た作品を絵画とは認めなかった。

 新しい表現を模索していた若き画家たちは、当然のようにサロンから拒絶されてしまう。そこで彼らは作品を発表するために、自らの手で展覧会を企画。旧態依然とした美術界に革命の狼煙を上げるべく、1874年に「第一回印象派展」を開催した。若き日のモネ、ルノワール、ドガ、セザンヌらが、従来の慣習にとらわれない新しい絵画を発表している。

 三菱一号館美術館で開幕した「ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠」では、印象派の礎を築いた画家の中からルノワールとセザンヌ、2人の巨匠をピックアップ。色彩にあふれ、温かみを感じさせる作品を数多く描き、印象派を代表する画家として世界中で絶大な人気を誇るルノワール。一方、セザンヌは印象派の画家として出発するも、印象派のさらに先を目指し、独自性の高い絵画を追究した。現在では「ポスト印象派」の画家として認知されている。

 この2人、性格も大きく違う。職人の息子として生まれ、明るく社交的な人柄だったルノワール。かたや銀行家の家庭に生まれたセザンヌは気難しく、人付き合いをあまり好まなかったという。意気が合わないように思える2人だが、1860年代初めに知り合ってから、生涯にわたって友情を育み続けた。セザンヌは1880年代に入ると、パリのアートシーンと距離を置き、故郷である南仏エクス=アン=プロヴァンスにて制作に没頭。そんなセザンヌの元をルノワールはたびたび訪ね、家族ぐるみで交流することもあったという。