スペクタクルな国芳作品がトリを務める
展覧会の最後を飾るのは歌川国芳(1797~1861)。出世作は錦絵揃物「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」。中国の長編小説『水滸伝』に登場する豪傑たちを描いたシリーズ物で、現在74図が知られている。梁山泊で情報収集、人材の品定めを担った旱地忽律朱貴(かんちこつりつしゅき)、知性派として知られる智多星呉用(ちたせいごよう)、荒くれ者の黒旋風李逵(こくせんふうりき)。人気キャラが続々と登場する本シリーズは絶大な人気を集め、身体に彫り物(刺青)を入れた登場人物が多いことから、江戸で“彫り物ブーム”が巻き起こったという。

国芳は幕末の奢侈禁止令(しゃしきんしれい)や出版統制に対して、スマートに切り返した絵師としても名高い。《名誉 右に無敵左り甚五郎》は、彫り物をする甚五郎と彼を囲む仏像という構図。この作品が制作された当時、役者絵の出版は幕府によって禁じられていた。そこで国芳は画中の仏像の顔を、役者の似顔絵として描いている。
江戸時代を代表する5人の絵師。さて、「推し」は見つかっただろうか。この5人を基本に、さらなる推し探しのために、浮世絵の世界をもっと深掘りしていくのも楽しい。
「五大浮世絵師展―歌麿 写楽 北斎 広重 国芳」
会期:開催中~2025年7月6日(日)
会場:上野の森美術館
開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)