息子バロンを受け入れなかったことへの復讐

 トランプ氏がハーバード大学を目の敵にする理由の一つは、同氏も息子たちもハーバード大学に入れなかったからだという理由がSNSではまことしやかに流れている。

 トランプ氏がハーバード大学(全米大学ランキング3位)*2を狙ったのか、最初から狙えなかったのか。

 分かっているのは、同氏は南カリフォルニア大学(同27位)を受けたが拒絶され、仕方なくフォーダム大学(同91位)に入り、3年次にペンシルベニア大学(同10位)ウォートン・スクール(大学院ではなく学部)に編入し、卒業したことになっている点。

Trump Biographer: This Is the ‘Real Reason’ He Hates Harvard

 長男、次男、長女は同氏の母校であるペンシルベニア大学やジョージタウン大学(同24位)卒業。

 トランプ氏はペンシルベニア大学と「特別な関係にある」と指摘する向きもある。

 3番目の妻、メラニア夫人との間に生まれたバロン氏(19)は今年、ニューヨーク大学(同30位)スターン・スクール・オブ・ビジネスに入学した。

 これについて、「ハーバード大学はもとより、ペンシルベニア大学やコロンビア大学(同13位)からも拒絶されたのか」といった憶測が広がっている。

*2=全米大学ランキングは「US News & World Report」作成の順位。難易度だけでなく、教授陣、図書館蔵書、学術成果、教育環境などを判断基準にしている。

2025 Best National Universities | US News Rankings

 これについてメラニアさんは、「家(トランプ・タワー)から通える大学を選んだ」とコメントしている。

Highly Lethal Weapons 202411 - V2

NBAD10 HK01 VV4

理事長はトランプの天敵

 トランプ氏のハーバード嫌いの要因の一つに同大学の理事長を務めているぺニー・プリツカー氏との確執をあげる人もいる。

 プリツカー家は、代々ニューヨークの不動産業兼ホテル経営(ハイアット・ホテル・チェ―ンのオーナー)業でトランプ氏にとっては「目の上のたんこぶ的存在」。

 グランド・ハイアット・ホテルの買収ではトランプ氏は煮え湯を飲まされた経験がある。

参考:トランプ・ハーバード戦争の火種はNYのグランド・ハイアット計画にあった DEI撤廃・反知性主義は表向き、根底にハーバード大理事長への復讐心| JBpress (ジェイビープレス) 

「ペルソナ・ノン・グラータ」になる

 そうした背景は脇におくとして、この戦争でどちらが勝つのか。

 ニューヨーク・タイムズのマイケル・シュミット記者はこの問題を密着取材してきたジャーナリストの一人。同記者はこう見ている。

「知識層は、ハーバード大学が『学問の自由』を守るために戦っていると称賛しているが、トランプ氏は大統領の持っている権力を組織的かつ創造的に使ってハーバード大学を攻め立てている」

「トランプ氏は敵に対しては攻撃の手を緩めない。『目には目を、歯には歯を』を実践している」

連邦地裁は留学生対策も含め一時差し止めにしたが問題の解決にはならない。留学生はハーバード大学にいられなくなれば他の大学に行くだろうし、訴訟スケジュールを見ながら次善の策を練る」

「裁判が始まってもハーバード大学に対する司法省や国土保安省の調査は続けられる。ハーバード大学はいわば『ペルソナ・ノン・グラータ』(好まざる人物)と世間では見られる」

「ハーバード大学で働く教授やリサーチャーも裁判所の一時差し止めがいつまで続くのか分からない以上、この状況に不安で仕方ないはずだ」

「ハーバード大学側も裁判でケリをつけたくとも、トランプ氏が破壊的手段を次から次に出す以上、打つ手なしだ」

How the Trump Administration Has the Upper Hand Against Harvard - The New York Times)

 となれば、ハーバード大学としてはどこかで譲歩せざるを得ない。下院中国特別委員会の追及も手厳しいものになり、「泣き面に蜂」だ。