順位以上にドイツや中国と差はある

 なお、「34年ぶりの逆転」というヘッドラインは耳目を引くが、達観すればドイツ、日本、中国の対外純資産はほぼ互角だ。もっとも、その源泉となった経常黒字の中身は全く異なる。

 中国もドイツ(ひいてはユーロ圏)も経常黒字は貿易黒字に駆動された結果である(図表④)。それに対して、日本だけが貿易赤字を包含する経常黒字である。

【図表④】

 その分、対外直接投資を積み上げた結果である第一次所得収支の黒字で稼いでいるわけだが、それに含まれる再投資収益はもちろん、証券投資収益(債券利子や株式配当金など)も円買いにつながる保証はない。

 結局、対外純資産「残高」がいくらであろうと、その世界順位が何位であろうと、それが自国通貨への安心材料となるためにはアウトライト(自国通貨の買い切り)取引が期待される貿易黒字が必要である。その意味で日本は順位以上にドイツや中国と差がある。

 断っておくが、対外純資産であれ、対外純債務であれ、その善悪を論じるのは筋違いである。経常収支が異時点間の最適な資源配分の結果だとすれば、黒字も赤字も善悪はないし、その累積である対外純資産も対外純負債も同様である。

 ただ、強いて言えば、対外純資産が大きいことに関して言えば、国内の投資機会が乏しく、海外にそれを求めてきたことの結果だ。速いペースで少子高齢化が進む日本において、対外純資産「残高」が伸びてきたことは必ずしも良いことではない。

 結局、毎年のように過去最高を更新する対外純資産が意味するのは「日本に期待収益率の高い投資機会が乏しかった」という歴史的な事実である。