対外純資産が増えた一番の要因

 対外資産の増加を要因別に見ると、前年差(+169兆4010億円)のうち、+110兆9450億円が「為替相場変動」であった。これは2023年末時点のドル/円相場の換算レートが141.40円であったのに対し、2024年末時点は157.89円と+11.7%、円安・ドル高に振れた結果である。

 ちなみに、ユーロ/円相場では156.25円から164.05円と+5.0%、円安・ユーロ高に振れている。円安によって対外資産が押し上げられた部分が極めて大きかったことは間違いない。

 しかし、より厳密に見るとそれだけとも言えず、「その他調整」が+145兆1560億円と「為替相場変動」よりも大きい。

「その他調整」は資産価格自体の変動に起因するものだ。一方、「取引フロー」、つまり実際の売買や投資などによって生じた増減分は▲86兆7010億円と減少している。より詳しい議論は商品別(株式、債券、デリバティブ)に展開可能である。

 これら変動要因から見えてくることは「数量として減少しているが、価格として増加している」という状況であり、それは即ち日本が保有する対外資産1単位当たりの金額が膨らんでいる状況を示唆する。このような変化が続くと、対外資産の流動性は欠けてくるようにも思える。

 なお、商品別に見ると、「その他調整」部分の多く(+127兆1720億円)が金融派生商品(デリバティブ)から発生しており、これはほぼ同額(▲126兆2430億円)が「取引フロー」で相殺されている。

 証券投資は「為替相場変動」で+50兆9890億円、「その他調整」で+23兆8160億円で価格要因が極めて前向きに作用したことがよく分かる。

 一方、株式単体で見れば「取引フロー」が▲8兆円と売り越され、債券は「その他調整」で▲17兆1230億円と価格下落が見られている。金利が高止まりする中、株式・債券市場にストレスがかかってきた様子が透ける。